第14話 謎の転校生
「ことはちゃん!! ことはちゃん!!」
「……どうしたの?」
翌日月曜日、朝のホームルームが始まる少し前に席に着いたことは。
ランドセルから教科書やノートを机に移していると、右隣の席の
「今日ね、転校生が来るんだって! 知ってた?」
「転校生? え、知らない! 女の子? 男の子?」
「それがね、ヒナが聞いた話だと、すごいイケメンの男の子だって!」
日菜ちゃんは高校生のお姉さんの影響なのか、芸能人や有名人の知識が小学生ながら豊富で、いつもあのドラマに出てた俳優さんがかっこいいだの、実はあのアイドルと兄弟で……などなど、そういう話題が大好きだ。
ことはの兄である時也に対しても、俳優のなんとかさんに似てるだとか言って、イケメンだ、かっこいいだ言っていることが多い。
だが大抵の場合、それはみんな小学生のことはからしたら、みんな大人で、かっこいいとか、イケメンだっとか言われてもよくわかっていなかった。
「へぇ、そうなんだ……」
(日菜ちゃん、そういう情報はいつもどこから聞いて来るんだろう……?)
テンションの高い日菜ちゃんと違って、イケメンというものにあまり興味のないことは。
このあと実際に担任の先生に連れられて、教室の中に入ってきたその転校生の顔を見て、確かに他のクラスの男子たちとは違って、芸能人とかアイドルにいそうな作り物のような整った顔をしているとは思ったが、他の女子たちが彼の顔を見てキャーキャー言っているのがよくわからない。
(うーん、わからない)
別に騒ぐほどのことでもないなぁ……なんて思っていると、担任の先生が黒板に書いた彼の名前の方に驚いた。
「今日からこのクラスの一員になる、
「「はーい!」」
(都木野————!?)
それは昨日、あの家に掲げられた表札と同じ苗字。
驚きすぎて、ことはは椅子から落ちそうになった。
「よろしくおねがいします」
ニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべながら、奏は軽くみんなに挨拶をすると、女子たちからは黄色い声援が……
そして、都木野奏は、みんなが注目する中、先生に言われた通り唯一空席だったことはの左隣の席に座り、ことはにだけ聞こえるように、小声で言った。
「よろしくね、花咲さん」
その声は、昨日ことはに邪魔だと言ったあの声に似ている気がした。
「な……なんで、わたしの名前……」
「だって、名札にそう書いてあるから」
確かに、この学校では登校したら名札をつけて、帰る時に外すことになっている。
「あ、あぁ……そうね。そうだよね」
本当に人の良さそうな笑みを浮かべている彼に、ことははそれ以上なにも聞かなかった。
だがこの時、ことははまだ席に着いてそんなに時間が経っていない。
名札をつける前に、ホームルームが始まってしまった。
この転校生が、名札をつけていないことはの名前を知っているわけがない。
ことはがそのことに気がついたのは、放課後になってからだった。
(あれ? わたし、今日名札……つけ忘れてた)
それでは、どうして、彼はことはの名前を知ったのか……
聞こうと思った時には、すでに彼は教室にはいない。
「ことはちゃん? どうしたの? ぼーっとして……早く帰ろうよ」
「う……うん」
日菜ちゃんにうながされて、ことはも教室を出たが、謎だけが残った。
昨日、邪魔だとことはに言ったあの少年の声と、彼の声は確かに似ているような気がするが、雰囲気がまるで違って、ことはの中で一致しない。
名前も都木野で、あの少年と同じ。
でも、人の良さそうな笑みを浮かべ、たった1日ですぐにクラスの雰囲気にも馴染んでしまった彼と、昨日の少年が同じ人物には、どうも思えない。
(変なの……別の人なのかな?)
明日本人に直接聞いてみようか……なんて思いながら、ことはは一度家に帰ってから、死神図書館の入り口がある都木野家へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます