第2話四御神とは──

落下防止用のフェンスに手を掛け、眼前の景色を眺めていると、背後から声を掛けられた。

「調査でもしているの?咎められるよ、ここにいたら」

「咎められはしないよ。許可を得ているからね、麻薙は違うだろ」

規則ルールだけは守るもんね、何があろうとさぁ。みたいに」

あのとき......かぁ。

麻薙の台詞ことばに、ふと脳裏に浮かんだ光景を振り払い、端的に返す。

「あれ以降か、面倒事に関わる羽目になったのは」

「カッコ良かったよ。四御神くんのおかげで現在いまを生きていれてる、ありがとう」

「やりたいことをやったまでだよ、と言ったら格好いいだろうけど......それほど出来すぎた、いや、優しい奴じゃない。ただ単に、見てられない姿を目の当たりにして、解決出来れば......なんて思っただけだよ。それだけのことに過ぎない」

に該当しているから、屋上にいるんでしょ。なんだかんだ言っているけど、他人に向き合える貴重な優しい人なんだよ。四御神くんは」

「過大評価だよ......『優しい人は──この世に1%にも満たない』らしいからね。その1%にも満たない内に俺なんていう存在はなり得ない」

「あの本に書かれた一文だよね、読んだことあるよ。好きな作家の一人の作品だから。でもっ、私は四御神くんを優しい人だと思ってるっ!」

そこで、俺は振り向いて、麻薙に微笑みながら、消え入りそうな小声で「ありがとう。その言葉で救われた気がする」と答えた。

俺の返答に彼女が困惑していた。

「......」





*優しい人~の文言は、湊かなえさんのポイズンドーター・ホーリーマザーに出てくるある一文です。

一度は、読んでほしい作品の一冊から、頷ける言葉の一つです。

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関わり合いにならないはずのモノに触れる羽目に 闇野ゆかい @kouyann

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