第6話  エピローグ

「ちょっとっ!」


 アレックスにまるで問い詰めるようなレイラに対し、ミラは怒りの声を上げる。


「あなたが誰か知らないけど、突然現れて色々と言ってくれちゃって、ちょっと失礼なんじゃないのっ!?アレックスはすっごく頑張ったんだからっ!」


 アレックスをじっと見つめていたレイラの視線がミラへと移る。そしてすぐにアレックスに視線を戻すと問いかける。


「この子は誰?」

「この子!?わたしはもう十七よっ!立派な大人なんだからっ」

「アレックス、なんでこんな子を連れてるの?」

「ちょっと!わたしを無視しないでよっ!」

「うるさい」

「なっ!?う、うるさいってどういうことよっ!」

「もう少し静かにして。アレックスと話せない」


 そんな会話を二人が続けていると、アレックスは思わず軽く噴き出し笑ってしまう。


「「アレックス!!」」


「いや、ふふっ、すまない。ちょっと昔を思い出してしまってね」


 口喧嘩をしていた二人はアレックスが笑ったことに対し、まるで仲のいい姉妹のように同時にその矛先を向けるが、またすぐに喧嘩を始めてしまう。

 そんな二人の様子にアレックスは当時のことを思い出す。

 何年も前、アレックスが隊長としてしばらく経ったときのことである。ガーデンの中で今のようによく喧嘩をしていた二人がいた。

 それが第六の隊長である闇を使うレイラと、第七の隊長である光を使うソフィアである。


               ・

               ・

               ・


 ―――(「ちょっと、レイラ!アンタまた寝てるアタシに力を使ったわね!」)

 ―――(「いつまでも寝てる方が悪い。あと声がうるさい」)

 ―――(「なんですって!?アンタが普通に起こさないからでしょ!?」)

 ―――(「だって面倒だもん。中々起きないし」)

 ―――(「ふふっ、二人とも今日も仲がいいね」)

 ―――(「「どこがよ!?」」)


               ・

               ・

               ・


 アレックスは目を瞑り、今は亡きソフィアへ祈りを捧げる。

(どうか安らかな眠りを……ソフィア―――)


 かつての仲間であるソフィアに深い祈りを捧げたアレックスは、喧嘩を続けている二人に声を掛ける。


「ミラ、それからレイラも」


 アレックスに呼ばれた二人はピタリと止まる。


「二人に色々と話しておかないといけないことがあるんだ。ただ、ここは道の往来だ。もう少し落ち着ける場所に移動しよう」


 「そ、そうねっ!こんなところでずっと立ち話をするのもあれだしっ」

 「わかった」


 二人ともアレックスの提案を受け入れ場所を変えることにした。そして今度はレイラが提案をする。


「それなら、僕が普段使ってる事務用の部屋があるんだ。そこでどうかな?」

「うん、私はそれで構わないよ」

「アレックスがいいならわたしも大丈夫っ」

「決まりだね。なら今すぐよ―――」


 レイラはアレックスとミラの顔を一度ずつ確認すると、二人へと告げる。


「僕たちが所属するアニムスガーデン、その本拠地となるクストスムンドへ」


 あの日、アレクサンダーの手によって死にかけ、シスル村で世話になってからおよそ三か月半。

 アレックスは、ミラとレイラと共に再びかの国へ足を踏み入れる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精霊騎士アルベルト もすまっく @mosmac

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ