「XXQQ年、『 』生まれる」


「XXQY年、保育園に入園。そこではおばあちゃんと呼ばれ、その容姿を酷くからかわれた」


「XXQZ年、初めての親友が出来る」


「XXZY年、小学校入学」


「XXZZ年、初めての、レイプ」


「XXZA年、初めて裏切られる」


「XXZB年、祖父の事故死。原因はよそ見運転。犯人に反省の色が見られない」


「XXZC年、初めて人を酷く傷つけた」


「XXZD年、一人も信じることができなかった小学校生活から別れを告げる。中学校に進学」


「XXZE年、親友が酷いいじめの対象になった。たった一人、庇う毎日」


「XXZF年、作戦を考えた」


「XXZF年、トイレに逃げ込んで泣き腫らした。白湯を飲んだ。父母には黙っていた」


「XYAA年、高校に入った。生き抜く術を身につけた私は完璧。もう人間関係では、迷わない。惑わない」


「XYAC年――」


 ――初めて、人を、この手で。


 殺した。


「はあ、はあ! はあ!」

 気付いた瞬間頭の先から爪先までサッと冷えて、顔が蒼ざめて、冷や汗が止まらなかった。

 誰も責めてはいないし、そうなった確証も何にも何にも存在はしなかったけれど、何故だかそう確信していた。理由は分からない。

 〝相手〟の親友の私に対しての反応が冷たくなったと感じた。〝相手〟の恩師が何故だか私に彼女の死因を話してくれない。


「や、『 』さんには言えないよ」


 それが本当に子どもを守るための手段だと思ったら大大大大大間違いだ。


 大間違いだ!


 その夜本気で死のうとした。

 こんな罪だらけ、いたって仕方ないと本気で思っていたからだ。

 周りからすれば迷惑千万だ。罪の意識は確実に心配性の母に伝染するだろう。でもそれが唯一の罪滅ぼしだと本気で信じていたのだ。

 誰も私を止めることは――

「わー! わー! わー!」

 瞬間誰かがまだ紅の垂れる腕を引っ張っていき、納戸まで引きずり込んだ。呆然としている間にその人物は不器用にガーゼで傷を塞ごうとしてまた

「わー! 違う違う!」

 とか大騒ぎしてまた風呂場に連れ戻した。

 傷がそこまで深くないのを確認してから大慌てで傷口を洗い流す。痛みで身をよじると血塗れの手で肩を抱きかかえ、上腕部を大丈夫、大丈夫とさすってくれた。十分洗い流せたのを確認してからようやくガーゼで圧迫止血を始めた。

 手がどんどん冷たくなっていくのを感じる。

「頑張れー頑張れー。生きろー生きろー」

「……何、泣いてるんですか。ってかどこから入ったんすか」

「そりゃアンタがこんな事になってりゃ慌てて出て来たくもなりますがな! あー、死ぬんじゃないかと思った! やめろよなぁマジで! もうー!」

 予想外の真剣さと大声で怒られて、また泣かれて、生きてて良かったー! と抱きしめられて、髭が棘のように首に刺さって。


 初めて人前で自分の為に涙が零れた。


「は」

 ――そこで目が覚めた。

 涙が一筋。こめかみを通り過ぎる。

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