「待ちなさい!」

 構うものか、このまま突っ走る!

 まだまだ夜が起きている。物凄い爆音で流れる音楽と目を穿つ蛍光の電飾。呆っと手持ちの携帯型ディスプレイに齧りつく人間とてきぱき働くアンドロイド。

 死んだ世界から逃げるように真っ直ぐ、走って、走った。

『性にだらしのない奴は善か悪か。せーの』

「善だ、善だ!」

『ねーねー。主語を多用する今の文学についてどう思う?』

「私は大ッ嫌い! 説明御託をべらべら喋りやがって! 説明だけじゃ済まされない所に私達は生きているっていうのに!」

 生き方を指定されて、傲慢の中に縛り付けられて、私達は思考を失った。生き方を見失った。

 どうしてそれを押し付けてくるの?

 正しさがあなた達にどうして分かるの?

 思考することの何が悪いの?

 狂人で何が悪い!

 文学を吸収しながら考え続けていた答えを確かにアイツは持っていた。


 だって、彼は


『頑張れー頑張れー。生きろー生きろー』

「生きたい……生きたい! 生きたい!」


 私と


『生きてて良かったー!』

「あなたと生きていたい!」


 一心同体。


「髭!」


 アイツが転がっているであろう部屋に続く階段に足をかける。後ろから改良型麻酔銃を構える音が聞こえた。

 会いたい、会いたい、会いたいよ!


 私を、抱きしめて!

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