第17話 日本食とは(後編)
過去の出来事を振り返り、Mt. Fujiもそんな感じだろうと期待せずに入る。
店内はお城をイメージした瓦の屋根があったり、和室に似た造りが施されていたり、思った以上に本格的だった。
さっそくメニューを開いてみる。
え、鍋焼きうどんがあるの?写真も日本のと同じだ……。
珍しいと思い、母と頼んでみる。兄二人と父は寿司御膳を頼んだ。
しばらくすると、白のシャツに黒のズボンをきっちり着こなした清楚感あるアメリカ人女性がこちらに向かって歩いてきた。セットになっていたサラダとみそ汁を持ってきてくれたようだ。
わ……なんか日本っぽい……。
サラダのドレッシングは和風で、みそ汁も日本のものと全く同じだった。日本人好みの優しい味でとても美味しく感じた。
期待が膨らみメイン料理を待ってみる。写真で見た通り、バランスよく野菜などの具材が入った鍋焼きうどんが来た。
うん、美味しい……!!私から好き!
母はもちろん、寿司御膳を頼んだ父と兄二人も満足そうに食べていた。
食べ終えると、五十代ぐらいの日本人女性が歩いてきた。
「星成さんですね。村上さんからお話は伺ってます。お食事いかがでしたか?」
「とても美味しかったです!ありがとうございます!」
「喜んでいただけて嬉しいです!」
父と日本人女性の間で話が弾む。聞いた話によると、日本人夫婦で店を経営しているとのことだった。アメリカ人だけでなく、いろんな国の方を雇うなどして日本食を教えているらしい。
「日本の味そのもので、とても満足しています!……一つ疑問なんですけど、カリフォルニアロールってアメリカ人が作った寿司じゃないんですか?」
「あぁ!あれは、アメリカ発祥のお寿司ですが、日本人の方が考案されました。なので私のお店でも提供させていただいてます。」
「そうなんですね!また食べに来ます。」
「はい!ぜひまたいらしてください!」
アメリカに来ていなかったら、きっと気づかなかっただろう。
久々に外食で日本の味を食べて、私の家族はかなり満足げだった。
Mt.Fujiを出て、東洋食品という店に向かう。村上さんによると、そこで日本のお菓子や調味料などが調達できるらしい。
店に入ると他国の食品も置いているからか、かなり独特なニオイがした。苦手だったが、我慢して中へ進んでいく。
「なんだこの紫色の卵……。気持ち悪っ。」
中から恐竜が出てきそうな気がして、見ていられなかった。食べている人を想像しただけで、少し気分が悪くなった。
さらに奥へ突き進むと、日本語表記の調味料が並んでいた。中にはラベルにSoy Sauceと英語で書かれた日本メーカーの醤油などがあった。
村上さんによると、実際に日本で売られてる商品と同じ味とのことだったので、母はその言葉を信じて躊躇なく買い物かごに入れていく。
お菓子コーナーへと移動すると、わずかだが日本のお菓子が並んでいた。
「私の好きなお菓子がある!これも……これも!ん?これ英語で書かれてる……でも同じ絵だから一緒だよね!」
三つぐらいお菓子を選んで、一緒に買ってもらった。車に乗って、さっそく私は嬉しそうにお菓子を頬張る。
「久々に食べた!!美味し~!」
日本のお菓子を味わえる時間は、私にとってかなり貴重だった。大事そうに一つずつ開けて、少しだけ食べていく。最後に英語表記がされていたお菓子を開けて、口に入れる。
「うわ!なにこれ!固い!!」
海外用として販売された日本のお菓子だったのだろうか。食べ慣れたチューイングキャンディーと違って、かなりショックだった。
「このお菓子好きなのに……。これはまたおばあちゃんに日本から送ってもらお……。」
以降、店を通い続けるうちに、お菓子を選別して購入するようになった。
輸入された日本のお菓子は、実際の価格より約二倍ほどした。そのため両親と子ども達の間でルールが定められていた。
日本のお菓子は、毎週土曜日(週一)三個まで買ってよし。
気づけば私の楽しみになっていて、日本人学校に対するモチベーションも確実に上がっていた。
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