第13話 生活への慣れ

クラスメイトのみんなと食堂へ行く。

私は今も母が作ってくれた弁当を持参していた。


約十五名のうち、私を含め三人が弁当だった。

私たち三人は先に席へ着き、給食を取ってきた生徒が残りの席を埋めていく。


弁当を取り出し、のりが巻かれた鮭おにぎりを食べる。

いつもと変わりなく美味しい。



「Ewwww. What's that !? Gross!」



突然隣に座っていた男の子が、汚いと大声で騒いできた。



「It's seaweed.」


「Seaweed!? I hate sushi, but you Japanese eat seaweed too!? That's disgusting! Don't look at me till you finish!」



のりだと答えただけでそこまで否定する……?


お寿司の存在は知っていたが、日本人が海藻まで食べるとは思わなかったらしい。嫌気がさし、食べ終わるまでこっちを見るなとまで言われた。ひどい言われようだ。



そんな彼が弁当箱から何を取り出すのか、ちらっと見てみる。


取り出したのは、市販のジュースとポテトチップス二袋だった。



え、それがご飯!?



周りも気にすることなく、あたかも普通に食べ始める。



「Is that all you eat?」


「Yup.」



確認すると、お昼はそれだけとのことだった。



昼食時間が終わり、給食組がトレーを戻しに行く。

生徒が紙パックのチョコレートミルクだけ特定のゴミ箱に投げ入れていく。

そして他は分別を一切することなく、自分より大きい黒のごみ箱にトレーをそのままひっくり返していた。


きれいに食べ切っている生徒は、誰一人いなかった。

もはや一口もつけず、用意されたご飯をそのまま捨てている子もいた。



周りの話を聞くと、給食を捨てることをthrow garbage awayではなくdump trash と言うらしい。実際に生徒が躊躇なく、よそ見しながら投げ捨てたりして、一部ゴミ箱からこぼれていた。


なぜ全部捨てたのか聞くと、単純に全部嫌いだからとのことだった。好きなものだけ食べるというのは、あたりまえ。廃棄を多く出しても、全く気にしていなかった。


食堂のおばちゃんたちは、嫌気がささないのだろうか。

いや、あたりまえだから気にしないか。


こぼすことに関しては、さすがに注意されていた。だが捨てることに関しては、教員含め誰一人注意する人はいなかった。



アメリカでの学校生活に少し慣れてきた。

クラブは有料で希望者のみが参加している。ほとんどが加入していないし、毎日三時ちょうどに授業が終わって、気兼ねなく即帰るだけだった。



休日に入りいつも通りのんびりしていると、日本から私宛の郵便物が届いた。開けてみると、日本で転校前にお世話になった担任の先生と二年一組生徒からのお手紙だった。


ページをめくるごとに、一人一人から長めのメッセージが書かれてる。かなり嬉しかったし、感動した。写真には当時と変わらないみんなの笑顔が写っている。



「お母さん、見て!懐かしい……すごく嬉しい……。みんなに頑張ってるよってお返事書きたい。」


「そうやな。メッセージカード買いに行こっか。あ、そうや。来週の土曜日、車で一時間半離れた日本語勉強会の見学に行くから。くるみはまだ参加せんけど家族みんなで行くし、そこで日本人のお友達ができると思う」



え!こっちにも日本人いるんだ……!



友達と日本語を話すのは三ヵ月半ぶり。

ドキドキとワクワクが入り混じって、少し楽しみだった。

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