10話.[私は変えないよ]

「星奈じゃなくて悪いのは桜だよ」

「なんで?」

「だって星奈の気持ちは分かるもん、でも、桜は未経験だからってなんでもおーけーにしようとしているよね」


 どうやら相手が異性の場合ならいまのままでもいいけど同性の場合はアウトみたいだ。

 それでも私は自分の言ったことぐらい守る。

 仮にこれで愛想を尽かされてもそれまでだったというだけだ。


「私は変えないよ」

「なんでっ」

「星奈のことも大切だからだよ」


 向こうが自然にやめてくるまではいまのままでいる。

 もっとも、私は行為に対して許可をするだけ、なんだけども。


「だから後悔するって言ったでしょ?」

「……分かったよ、……ちゅーとかさせてないなら許容範囲だし」

「それはさすがにね」


 多分、少しすれば落ち着くと思う。

 それでなんでこんな人間を好きだったんだろうってなってくれるはずだ。

 それは弥生も同じこと。

 そうしたらまた三人でゆっくり仲良くしていけばいい。

 無理ならひとりの生活に戻せばいい。

 してみて分かったことだけど、あれはあれでかなり落ち着く時間だったんだ。


「そういえば翆ちゃんは?」

「二階は暑いみたいで客間で爆睡中かな」


 元々寝ることが好きだったのは翆の方だ。

 暇だったから真似をしてみたら気持ちよかったからその後も~というだけで。

 やっぱり身近な(あんまり近くないけど)年上の存在って結構影響を与えるんだなといまさらながらに分かった。


「……桜は私のなんだからね?」

「いつ弥生のものになったんだろう……」

「受け入れてくれた瞬間からだよ」


 それなら弥生は私のものということになるのか。

 つまり……いや、考えるだけでなんかちくちく痛いからやめておこう。


「んー」

「まさかキス待ち……ですかい?」

「……うん、いいでしょ?」


 うぐっ、不安そうな顔がよりダメージを与えるという……。

 断ったら絶対に悲しそうな顔にチェンジするからこうなった時点で詰み。

 なんか慣れているみたいだったから任せると言ったら迷いなく両肩を掴んできた。

 それで私が乙女みたいに目をぎゅっと閉じたところでぶちゅうと……。


「……本当に後悔しても知らないからね?」

「後のことなんてどうでもいいんだよ、私がいま大好きな桜とこういうことをできたというだけで十分なんだよ」

「色々と小さいくせに中身は変態なのかもね」

「否定はできないかも、前々からいっぱい触れたいって思っていたよ?」


 怖い怖い、油断していると食べられてしまいそうだ。

 こういう人間こそ一度気づいてしまうと覚醒してしまうというか。


「これからもよろしくね、もう延々に離さないから」

「はは、分かった分かった、よろしく」


 偏らないようにしようと決めた。

 もしかしたら私だけでは抑えられなくなってしまうからね。

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63作品目 Rinora @rianora_

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