第6話 アマチェリッテの憂鬱
「聞きました?殿下が孤児に一目惚れして、王妃にするためにゴードン子爵の養女にしたらしいですわ」
「まぁ、ではアマチェリッテ様はどうなりますの」
「婚約破棄を殿下が願い出てると言うお話もありますわ」
「上級試験に受かった秀才らしいですわ」
青天の霹靂だった。
殿下こと、ジョシュアは柔らかな金髪に青い眼、子どもの頃から紳士的で絵本から抜け出たような王子様だった。そして、私はそんな彼のことが初めてあった時から好きだった。
だから、5歳となり婚約が正式に決まった時は本当に嬉しかった。
ジョシュも「ずっと一緒だ、ずっと大事にする」
そう言ってくれていた。のに。
確かに、ジョシュは年々街に行くことが増えていった。
「社会勉強だ」と言っていたけど、彼が修道院の話をするたび、ちくりと胸が傷み、不安になった。一緒に行きたい、というと「それはダメだ」と断られた。
それでも、ジョシュはずっと優しかったから、婚約者は私なんだからと頑張れた。全ては彼とずっと一緒にいるために。
なのに、孤児に一目惚れですって?
否定したかったけど、間もなく、噂通り修道院育ちの孤児、アリシアという子がゴードン子爵の養女となった。ジョシュは、アリシアに度々手紙を書いているという。もしかしたら本当に?不安はどんどん大きくなる。
ジョシュには聞けなくて、でもいてもたってもいられなくなった私は、ゴードン家に向かった。
そこで見たアリシアは、特別綺麗ではなかったけど、きらきらしていた。ブルネットの髪と青の瞳が彼女の少し焼けた肌には似合っていた。私とは全く違う。そして、陛下と同じ青い瞳。
アリシアは私を見て弁解したりすることなく、完璧なカーテシーを披露した。
つい先日引き取られたばかりだと言うのに、噂通り優秀らしい。私はとても苦労したのに。この調子なら、私が苦労して覚えたことも簡単に身につけてしまいそう。にこにこと笑う彼女にこれは宣戦布告ではないかしらと思うと、走り出してしまった。
走りながら、立ち止まる。
勘違いかもしれないじゃない、と。
アリシアは太陽みたいで嫌味な感じはしなかった。話を聞いて見たいわと。
アリシアに謝り、話を聞こうと戻っている途中、殿下とラッセル様を見つけた。
さっと血の気が引く。やっぱり噂は本当なのかしらって。
こっそり後をつけ隠れながら、3人を見ると仲良くはなしている。
「とても親しげだわ」胸がキュッとなり、涙がこぼれそうになる。
「アマチェリッテ••」私の名前が聞こえた気がして、もっと近づこうと身を乗り出した時だ。毛虫がうにょと目の前を横切った。
「きゃ、虫」
思わず叫んでしまい、3人の前に飛び出た。
令嬢の恋を成就させたいのにツンデレがすぎる AriakE @ArieakE
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