第5話 不必要な誤解
「へ?」
「は?」
「なんてこと!」
私、ラッセル、アマチェリッテ様、悲喜交交、三者三様の驚き方をしたものの心は一つ。
『何を言ってるんだお前は。』
「殿下、それは一体どうゆうことですの」
勇気を振り絞ったアマチェリッテ様が声を震わせながらとう。
私も思わず頷く。どうゆうこと?
「初めてだったのだ、あんな激しい衝撃を受けたのは。感動すらしたと言っていい。よもや修道院にいる孤児があれほどの技を持っているとは。」
急に殿下がくるっとアマチェリッテ様に背を向け芝居めいた口調で話し始める。ラッセルがどう言うことだと言いたげにつんつんと私をつつく。つつかれても心当たりが全然ないのだ。
アマチェリッテ様は震えている。よく見るとちょっと涙ぐんでる。
「もういいですわ、ふしだらな、最低!ばか!ジョシュのばか!初めては私って言ってたのに、大っ嫌い!!」
そう言い、私を睨みつけ、再びアマチェリッテ様は走り去って行った。
相変わらず足が速い。
なんて感動している場合ではなかった。
「アミィ?!どうしてだ、まだ話は終わっていないのに」殿下が困惑しているが、お前がこの状況を作り出したんだと頭を叩いてもいいだろうか。
「殿下がどうしてですよ、というかアマチェリッテ様追いかけなくていいんですか?」と聞くと、
「アミィは足が速いからな、ほらもう見えない。どうせ追いつけはしない」
悟った様にいう。こんな風に置いておかれるのは初めてではないのだろうか、軽蔑の眼差しで見つめる。
ならば、説明していただこう。
「あれは、7歳の時だった。」何も言ってないのに心得たとばかりに説明を始めた。
「「7歳?」」
「そう7歳だ。お前が修道院の裏庭で剣の稽古をしていただろう」
あ、待ってオチが見えたよ。
「そんなお前に勝負を挑んだら、俺の木刀が折れるほどの衝撃で俺を打ち負かしただろう、初めてだったのだ。城では、まだままごとの様な稽古でな。俺は強いのだとすら思っていた。しかし、修道院育ちの剣の稽古もろくに受けていない様な少女に負けたのだ。あれは衝撃だった、自信を完全に奪われたよ。
そして、思ったのだ、この者なら俺のアミィを任せられると。」
ほら、そんなおちだったよ、ドラマティックに出会いを語ろうとしたために大いなる無駄な誤解を生んでしまったことに気づいてないのだろう。
本人は目をキラキラさせている。
「ほらな、殿下はアマチェリッテ様が絡むと馬鹿になるんだ」
「この国の行く末が不安です」あれが次期国王だなんて、シスターたちが知ったらこれから毎日お祈りの時間が増えるだろう。いや、1日中祈りだすかもしれない。
「アマチェリッテ様が絡まなければ聡明なんだ」急に弁解しだすラッセル。
「王妃が絡まないって、色々無理ですよ」
亡命したくなってきた。
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