第4話 お手紙とぽんこつ
「拝啓
庭の桜も綻びて」
「何を言っているんだ、お前は」
「ああすみません、前世でよく母がそんな手紙を書いてたもので」
「前世?」
「なんでもないですってば」と言うと、大して興味もなかった殿下は
「そうか、では」と筆をとりサラサラと書き始めた。1人で書けると言うので、紅茶を飲みながらラッセルと待つ。5分も経たず、
「出来たぞ」と殿下が自信満々に差し出してきた。
『親愛なる アマチェリッテ
将来君の侍女候補として推薦したい者を修道院で見つけた。
頭がよく、気も効く、剣術の腕もそれなりだ。君には負けるが見た目も悪くない。もちろん君の方が美しいが。
彼女とは数年の付き合いがあり、何年も共に少ない時間を過ごしてきたから、彼女の資質は間違いない。いざと言う時、君の盾になるだろう。
そのために、彼女を孤児院から引き取り、ゴードン子爵の養女とすることにした。いずれ挨拶に行かせよう
ジョシュア』
「なるほど、言わんでもいいことが書いてある」
「あと、ちょっと気持ち悪いですね」
と銘銘感想を言うと、
「え、だめ?」
としゅんとする殿下を放っておき、新しい紙に筆を走らせる。
『親愛なる アマチェリッテ
大切な君の侍女候補として推薦したい者を修道院で見つけた。
頭がよく、気も効く、剣術の腕も申し分ない。いざと言う時、君の盾になるだろう。そのために、彼女を孤児院から引き取り、ゴードン子爵の養女とし教育することにした。
愛を込めてジョシュア』
「あ、あい」
「いいんですよ、拗れてそうだからこんくらい直接的な方が。あと、私と数年の付き合いとか、仲良さそうなことはダメです、きもいし。それから、こうしてうちにいらっしゃるのもまずいかと。今後は、すべてラッセル様経由でお願いします
では、とりあえず、これ清書して下さい」
「でも、紋章が」
「そんなもん、帰ってから押せばいいでしょう。」
殿下にペンを握らせ、手紙を書かせ始めたところだった。
「きゃ、虫っ」
と小さい悲鳴とともにアマチェリッテ様が茂みから飛び出してきた。
帰ったんじゃなかったのか。
「アミィ!」慌てて殿下がかけより、手を貸そうとする。
アマチェリッテ様はパシッとその手を叩き、
「触らないで!」アマチェリッテ様は1人で立ち上がり、
「アリシア様、ラッセル様と殿下との距離が近いのではなくて?
貴族令嬢としてあるまじき態度でしてよ。そんな状態では、きちんと教育の効果が表れていないのではなくて?そんな、そんな子に王妃は務まりませんわよ」
勘違いの真っ只中にいるアマチェリッテ様は一息に言うと、今度は殿下に向き直り、
「殿下、婚約は陛下がお決めになったことです。即妃なら結構ですが、ご自分のお気持ちだけでは、王妃は決められせん。」という。
「違うんだ、アミィ。この者はそう言うのではなくて」
「では、どういう者ですの。」
殿下がしどろもどろしてるせいで、余計怪し苦なってしまっている。
ラッセルが手紙を振る。
そう、それだ、さっき書いたのを思い出してください、殿下。
そんな祈りも虚しく
「この者は、私の初めてを奪ったのだ」と言い出した。
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