第3話 教育スタート
次の日から、修道院育ちの孤児を貴族令嬢にする教育が始まった。
学力の方は、幸いなことに足りているが、貴族令嬢として知らなければならないあれやこれやが多い。それでも、ジョンのお陰でだいぶ楽だったが。今思えばあの経済学の本とかのためだったのかとよく分かる。
カーテシーやカップを乗せて歩いてみたり、変なとこが痛い。
「あだだだ」
「お嬢様、その様なお声を出されませんように」
私の就職先は、将来の王妃付き。となれば、厳しいのも無理はない。侍女の評価が王妃の、王妃の評価がこの国の評価となるのだ。仕方ない。一日中入れ替わり立ち替わり、歴史、地理、語学、マナー、ダンス、剣術とくるくる変わる。
とはいえ、休みなしというわけでもなく癒しもあった。それは
「アリシアお姉様、クッキーを一緒に食べましょう」
と弟になったクロードが毎日15時にやってくるのだった。ふわふわの栗毛にまん丸の緑の目。突然現れた孤児がお姉様になっても、ぐれることもなくただひたすらに甘えてくる。「僕、ずっとお兄様かお姉様が欲しかったんです。でも妹や弟はお母様にお願いできても、お兄様かお姉様は無理でしょう。だから僕とっても嬉しくて」と甘えてくる。天使みたいに可愛い。
ただ、「お姉さま、姿勢が崩れていらっしゃいますよ」とちょっと厳しい。
ジョン、改めジョシュア様は、ラッセルを遣いに手紙を定期的によこし、やれ調子はどうだと聞いてくる。ラッセルは、相も変わらず無愛想だが、課題に悩んでいたりすると教えてくれるので便利だった。
そんな忙しいながらも楽しく充実した日々を過ごしていたある日のことだった。その日は、カーテシーができる様になりきちんと歩ける様になった私はお母様とお父様に見てもらうため、バラ園へと向かっていた。
すると何やら庭が騒がしい、どうしたことかとみやると
「どうかお待ちください」「どこにいますの?!」そんな会話を大声でしながら庭をズンズン歩いている少女漫画のヒロインの様な女の子がいた。
金髪のロングヘアが太陽に当たって煌めき、ゴテゴテした装飾のついたピンクのドレスに負けてない甘い顔立ち、そして青い目。これぞ美少女。
「アマチェリッテ様」私の将来のご主人様だ。ここまで美少女だったとは、と感動していると、
「あなたが、アリシアですの」と声が聞こえる。
声まで可愛いのか、と感動していると
「あなたがアリシアかと聞いているんですの」と苛立った様に声をかけられた。
あ、私を探してたの?そりゃ自分の侍女になる女は気になるよな、第1印象大事、とできる様になったカーテシーを披露し
「大変失礼いたしました、アリシア・ゴードンでございます。」と挨拶をする。
我ながらちゃんとできた。これで、第1印象は悪くないと思いアマチェリッテ様を見つめると、ワナワナしていた。
なんか、思ってたのと違う。
「あなた、あなたなんかに負けませんわよ!!婚約者は私なんだから!」
と涙目になって走っていった。
「知ってます、殿下の婚約者のあなたを支えるために今こうして頑張っているんです、ってあれぇ?」
走り去ったアマチェリッテ様には聞こえてない。なんか誤解がある?あのドレスであんなに早く走れるなんてすごいなと将来の主人のポテンシャルに感動しつつも、呆然としていると、ラッセルとジョンじゃなかったジョシュア様がやってきた。
「あ、殿下」とやはり覚えたてのカーテシーを披露する。
「おお、上手じゃないか。ってそうじゃない。アミィが来なかったか?」
あみぃ?ああアマチェリッテ様か。
「ああ、いらっしゃいました、それで、負けないとか言って走り去っていかれました。なんだったんでしょう?」と尋ねると
「ああ」「やっぱり」
2人がため息をついている。
「どうやら、お前のことが間違って伝わっていてな、俺が一目惚れした孤児を王妃にするためにゴードン子爵の養女にしたことになってるみたいで」殿下が説明してくれる。
「え、それでアマチェリッテ様が勘違いして宣戦布告に来たの?げぇ、何そのめんどくさい感じ」
「アリシア、素が出てるよ」ラッセルが一応嗜める。
「素どころか足ももう一本でそうですよ。殿下ちゃんとアマチェリッテ様に事前に説明なさいました?」
「いや、その照れ臭くて」
「は?」
「いや、だから王妃のお前を守るために腕と頭が切れる者を教育しているって、亭主関白っぽくて過干渉で嫌われないかなって」ジョシュアが乙女の様に顔を赤くして顔を両手で隠す。
「は?」王妃のために人材育成あれこれするのは国益に繋がるしいいだろ別に。というか
「殿下はね、アマチェリッテ様のことが大好きなんだよ、ちょっと気持ち悪いくらい」
「将来の王と王妃が仲良いなんて、いいことなはずなのに、なんかムカつく」
「それはね、君も俺もその2人のために不必要にがんばらないといけないからだよ」
なるほど.
「殿下の説明不足のせいで、アマチェリッテ様は勘違いをなさり、私に宣戦布告をしたと..」納得である。
将来の王妃に収まろうとする女の顔を見に行くと、弁明もせず、堂々とカーテシーをする。アマチェリッテ様にしてみれば、私の方が宣戦布告してる様に感じただろう。
「どうするんですか、これ説明しても遺恨残りそうじゃないですか、殿下のせいで」
「全くですよ、恥ずかしいとかよくわからないこと言うせいで、アリシアそしていずれは俺にも迷惑かけて」
「申し訳ない」
「謝らなくていいですから、なんとかしてくださいよ」
「待て、このまま殿下に行かせてもきっと墓穴を掘る、言うべきことは言えず、言わんでいいことばっか言う」
「ボロクソだなおい」「事実だ、殿下はアマチェリッテ様に関しては小枝より使えない」
「じゃぁ。お手紙でも書きます?」
2人がガバッとこっちを向いた。
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