ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第23話 何気ない毎日を何も考えないで生活する。だが意外と見てる人は見ているものだ。お天道様だけではなくて周囲の人が何気ない日常を見ているものなのだ。しかし本人は気づかない。誰かに言われるまでは。
第23話 何気ない毎日を何も考えないで生活する。だが意外と見てる人は見ているものだ。お天道様だけではなくて周囲の人が何気ない日常を見ているものなのだ。しかし本人は気づかない。誰かに言われるまでは。
「えーっと……あれは誰?」
「さ、さぁ……私にも分からないわ」
女性を前に固まってしまっている片山さん。
するとその女性は片山さんの方に近づいて行き、目の前で彼を怒鳴り付ける。
「話は聞いたわよ……どういうことよ!」
「ど、どういうことって……なんの話をしているんだ?」
「とぼけたって無駄よ! この写真の子たち、皆あなたの被害者らしいじゃない!」
「え……えええっ? ななな、なんのことだ?」
「まだとぼけるつもり? 浮気ならともかく……浮気も許せないけど、脅迫して無理矢理関係を持つとか……ただの犯罪者じゃない!」
犯罪者……確かにそうだ。
良好な関係ではなく、一尺八寸のように無理矢理関係を迫るやり方は犯罪でしかない。
しかしこれだけ片山さんに怒って、さらに浮気だなんて単語を使っているところを見ると……この人は片山さんの奥さんなんだな。
「ち、ちょっと待て一葉、お前は勘違いしてる。誤解をしてるんだよ」
「本当に誤解かしら? 被害者たちは全員あなたを訴える準備を進めているわよ」
「だ、誰だお前……?」
片山さんの奥さんの後ろから近づく、美男美女。
二人とも銀色の髪をしており、日本人離れした容姿の持ち主。
そう、それは凛と樹であった。
「凛……」
「直くん、顔は大丈夫?」
「あ、ああ。問題ないよ。ちょっと痛いだけだ」
俺に駆け寄り、心配そうに頬に触れる凛。
すると凛は俺の顔を消毒し、湿布を張り、包帯でグルグル巻きにし始めた。
「やり過ぎだ! やり過ぎだから!」
「でも直くん怪我してるじゃない……凛、心配だよ」
「と、兎に角そういうのは後にしてくれ」
「……そうね」
俺にニコリと笑顔を見せたと思うと、勢いよく振り返り鬼の形相で片山さんを睨む凛。
片山さんはその迫力にたじろいでいる。
「う、訴える準備って……どういうことだよ?」
「そのまんまの意味。被害者の皆、あなたにやられたことに対して法的処置を取ろうとしているの」
「う……嘘だろ? いや、しかし、俺はなんの罪にも問われないはずだ! だって俺はあいつらとただ|ヤッた《・・・》だけなんだから」
「刑法177条。強制性交等罪。脅迫して行為を強要するのはれっきとした犯罪だ。もうお前は終わりだ。覚悟しとけ」
樹が冷たく片山さんを見据えている。
あんな冷たい樹を見るのは初めてで、俺は少し困惑していた。
「樹……なんかお前らしくないな」
「俺は俺のままだ。ただ悪人が許せないだけなんだよ」
樹は俺を見てニヤリと笑う。
「お前と同じで悪が許せないんだ。あ、ちなみに俺、弁護士の資格持ってるから」
「そ、そうなのか?」
樹は確かに、大学の法学部を卒業してたよな……
そうか、弁護士の資格を持ってるのか。
「き、木更津くん、この人たちは?」
「二人は……えっと」
どう説明をしたらいいのだろうか。
幼馴染……それはそうなんだろうけど、今は凛に養ってもらってるし……
ああ、もう。今はそんなの事細かく説明する暇はない。
それなりに聞こえるように説明を済ませておこう。
「恩人だよ、俺の」
「そう、なんだ」
片山さんは凛と樹の言葉を聞いて、地面に膝をついて呆然としている。
「つ、捕まるのか……俺?」
「当然でしょ? あなた、それだけのことをやったのよ? 今だって新たに被害者が生まれようとしていたじゃない!」
奥さんの怒声に一尺八寸が震える。
そうだ……もう少しで一尺八寸も被害者になるところだったんだ。
今日で良かった。
俺がいる時で本当に良かった。
「さ、最悪だ……なあ、示談にはならないのか? お願いだ、話ぐらいはさせてくれ」
「それは被害者次第だな。でも、もう話し合いは無駄だと思うぞ」
「そんな……」
片山さんはガクンと肩を落とす。
「…………」
意外なことで俺たちの話し合いに決着がついてしまった。
俺はもちろん、一尺八寸もまだ唖然としている。
だけど、これで全部無事で終わりか。
被害者の人たちは可哀想だけれど、とりあえず一尺八寸が無事で良かった。
俺は安堵のため息をつく。
ため息をつくと同時に凛がまた口を開き出した。
「まだ一番の問題がのこっているのだけれど」
「い、一番の問題……俺、他に何かやったか?」
「ええ。あなた、直くん……木更津直巳をさっき二度も殴ったわよね?」
「あ……」
「ハッキリ言って万死に値する行為よ! 時代が時代なら、牛裂きの刑よ! 四頭の牛の角に縄をくくつけて、身体を引き裂く刑よ!」
「いや……そこまでの罪じゃ……」
「直くん。直くんが優しいのは分かってる。だからここは凛に任せておいてね」
怖い。
とびっきりの笑顔を見せてはいるが、完全にブチ切れている。
顔を殴られたぐらいで、そんなに怒るなよっ!
凛の勢いに飲まれ、ガタガタ震える片山さん。
すると俺の方を見て、土下座を始めた。
「す、すまなかった、木更津! 許してくれ……許してくれ!」
「あ、別に俺は――」
「
「木更津様……許して下さい……お願いします」
とうとう涙を流し始めた片山さん。
俺はただ苦笑いを浮かべるばかりであったが、凛はこれだけやらせても許すつもりはないらしい。
もう後のことは凛に任せておこう。
俺の制止だって聞かないつもりみたいだし。
……本当に怖いなぁ、凛は。
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