ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第22話 レギュラーを取れないままベンチに居座り続けていたが、突然試合に投入されることに。実戦経験はないが、その時はもうやるしかないのだ。それと同じで、討論や喧嘩の経験はないけれど戦うしかないのだ。
第22話 レギュラーを取れないままベンチに居座り続けていたが、突然試合に投入されることに。実戦経験はないが、その時はもうやるしかないのだ。それと同じで、討論や喧嘩の経験はないけれど戦うしかないのだ。
「お前……あれだけ面倒見ててやったのに、俺に歯向かうってのか!?」
「それとこれとは別です。女子が泣いてるんですよ。そんな状況ではいどうぞなんてなるわけないでしょ」
一尺八寸は俺の服を掴んで震えているようだった。
俺は片山さんに対して恐怖心を抱いていたが……彼女を安心させるために強がってみせる。
ちょとぐらいは恰好付けておかないとな。
「仕事はできないのに、女は守れるってか」
「仕事はできなかったから、女ぐらいは守らなきゃでしょ。これぐらいやらないと何もできない無能じゃないですか、俺」
「無能だろ、お前は! 課長に調的にされて、ロボットみたいに仕事して……でも仕事もできない何も出来ない、無能以外になんて言えばいいんだよ、お前のことを!」
片山さんの叫びに反応するように、どこからか怒鳴り声が聞こえるような気がするが……今は関係ない。
俺は彼の言葉を真摯に受け止め、こっそりと傷ついていた。
いや、事実だとしてもこれだけ目の前でそれだけハッキリと言われると傷つくでしょ、誰でも。
「無能で構いませんよ。強引に女性に関係を持ち帰るクズよりはマシだと思います」
「……俺がクズだぁ?」
「そうでしょ。自分の立場を利用して、女を騙して物にして。俺は無能以外に呼び方が無いかも知れないですけど、片山さんだってクズ以外に呼び方無いでしょ」
「お前!」
片山さんが俺の頬を殴りつける。
痛みが走り、口の中に鉄の味が広がり、そして血が流れ出した。
痛い……殴られる覚悟はしてたけれど、実際殴られたら実際腰を抜かしそうになる。
怖い……でも逃げるわけにはいかない。
自分のバクバクいう心臓を聞きながら腕で血を拭い、片山さんの目を真っ直ぐに見る。
「図星ですか? だから俺のこと殴ったんですよね?」
「てめえ……九生から何聞いたか知らねえけど、適当なこと言ってんじゃねえよ!」
「九生なんて呼ばないでください! 私たち恋人でもなんでもないんですから!」
「これからなるからいいんだよ! てめえは俺の女だ。これはもう決定事項だ。いいな?」
「よくないですよ。一尺八寸は俺と付き合う予定なんですから」
「はぁああ!?」
首を絞める勢いで、胸倉を掴む腕に力を込める片山さん。
苦しい……お願いだから止めて。
俺はなんとか片山さんの腕を振りほどき、咳払いする。
「お前、適当なこと言ってんじゃねえぞ!」
「い、いや、本当ですし。だから俺の女の手を出してるのは片山さんの方なんですよ。なあ?」
「……ええ」
一尺八寸は戸惑うこともなく焦ることもなく、平然と答えた。
片山さんは地団駄を踏んで怒りに怒る。
「なんでてめえみてえな無能に惚れんだよ! ってか聞いてねえぞ! こいつと付き合うなんて話!」
「さっき決まった話ですから。片山さんとのトラブルを解決してから付き合おうって。ね、木更津くん」
「お、おお……」
一尺八寸が腕を組んでくる。
彼女の柔らかさと暖かさを腕に感じ、俺は少し緊張していた。
「……俺は狙った女を物にするって決めててな……何がなんでも俺の物にするぞ、お前を」
最悪だ……想像以上に最悪な人だ。
なんで俺はこんな人を尊敬していたのだろう。
まぁずっと片山さんの表面ばかりを見ていたからなんだろうけどさ。
でも……ここまでの人とは思っても見なかった。
他人の気持ちより自分の欲望を優先するような、本物のクズとは……
もう何が何でも一尺八寸をこの人に渡すわけにはいかない。
「俺だって、自分の女はなんとしてでも守りますよ」
「あれだけ助けてやったのによ……ちょっと女貸すぐらいのことできねえのか?」
「ちょっと女貸すなんて、そんなこと絶対にできませんよ! そんなことしたら男として終わりでしょ。無能だからこそ、自分の女ぐらいは死んでも守りますよ」
「このっ!」
また俺を殴る片山さん。
その威力に頭がクラクラし、俺は尻餅をつく。
「ん?」
こけた拍子に、ポケットに入れていた封筒が地面に落ちる。
これは確か……凛が切り札って言ってたやつだ。
あの後凛は俺にこう言っていた。
『あの片山って男とトラブルになったら、これを開けたらいいわ』
それはまさに今この瞬間。
トラブルもトラブル。
最悪の状況だ。
しかし切り札ってなんなんだろう……
俺は封筒を手に取り立ち上がり、端を破って中身を取り出す。
「おい、話し合いの最中だろうが! 何やってんだよ!」
「…………」
俺は片山さんの方に視線を向けながら中身を確認する。
中からは……一枚の手紙が姿を現す。
それを素早く読み、俺は驚愕する。
「か、片山さん……」
「ああ?」
「結婚してたんですか?」
「…………」
チラッと片山さんの方を見ると――彼は顔面蒼白で顔をひくひくとさせていた。
あ、事実なんだ。
本当に結婚してるんだ。
そして封筒の中から何枚かの写真が入っている。
「片山さん……これ、あなたの被害の人たちですよね?」
「なっ……」
片山さんは俺から写真を取り上げ、写真に目を通し、困惑した表情で視線をこちらに向ける。
「お、お前……いつこんなの撮ったんだ?」
「そんなのどこでもいいでしょう、あなた」
「か、一葉……」
一人の女性が恨みのこもった目つきで片山さんを睨みながら俺たちに近づいてくるのが視界に入る。
片山さんはその女性を見て愕然し始めた。
え? この人は誰?
何が起こってるの?
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