ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第15話 ゲリラ豪雨にゲリラライブ。それは予告もなく突然起こるもの。きっと誰でも困惑するはずだ。それはゲリラ撮影会でも同じこと。いきなりそんなものが始まっても反応に困るのです。
第15話 ゲリラ豪雨にゲリラライブ。それは予告もなく突然起こるもの。きっと誰でも困惑するはずだ。それはゲリラ撮影会でも同じこと。いきなりそんなものが始まっても反応に困るのです。
凛のマンションに戻り、うんうん唸りながらエレベーターに乗る。
一緒にエレベーターに乗った親子に変な目で見られていた。
俺が最上階のボタンを押すとちょっと意外そうな顔をして目を逸らす。
いや、俺は寝泊まりさせてもらってるだけだからね。
なんてわざわざ説明もしないけど。
親子は十五階で降り、一人の時間が訪れる。
片山さんのことを思案するも、すぐにエレベーターは最上階に到着した。
「どうしたもんかな……」
「何? 元同僚のことで悩んでるの?」
「うわっ! って、凛。こんなところで何やってるんだよ?」
「何って、直くんの出迎えだよ。おかえり」
「た、ただいま……」
凛はエレベーターの乗り口で俺を待っていたようだ。
これが恋人だったら抱きついて喜んでたりするところなんだろうけど……
しかし凛は恋人ではないし、それに引っかかる点があってそれどころではなかった。
喜びより恐怖が勝る。
「いや……なんで元同僚の話を知ってるんだよ?」
「
「だからなんでそんなこと知ってるんだって聞いてるんだよ! おかしいだろ、さっき聞いた話だってのに。いや、そもそもお前がこの話を知ってること自体がおかしいんだよ!」
「あはは。直くんのことはなんでも知りたいんだもん」
可愛く言っているが正直怖い。
どこでどうやって情報を入手してんだよ、ったく。
探偵とか雇ってるのか?
それは十分にありえるな。
樹を俺に付けるぐらいだし。
「おかえり。さっきは一尺八寸って女と色々話してたな」
「お前か! 全部凛に報告してるのは!」
「おいおい、何言ってんだよ」
部屋の方から現れた樹はニヤリと笑う。
「ち、違うのか?」
「凛に全部報告するのなんて当然だろ! だって俺は凛のための戦士なのだからな!」
「そんな胸張って言うことかよ……」
「あはは。でも直巳」
「ん?」
ポンと俺の肩に手を置く樹。
「……俺だけじゃあないんだぜ」
「…………」
背筋にゾクゾクと寒気が走る。
樹だけじゃない……ってことは、他にも俺を監視してる奴がいるってことか。
怖い……ちょっと凛ちゃん怖いよ。
なんでそこまでするの?
俺は天使のように微笑む凛に、愛想笑いを向ける。
「直くん。あんまり首を突っ込むのはおススメしないよ」
「な、なんでだよ……」
「だって……変に助けてライバル増えるのは面白くないもん」
「なんだよ、ライバルって」
樹と凛がポカンとする。
「いや、お前……分かんねえの?」
「分かるかよ。どういう意味だよ?」
「お前は鈍いんだな。驚きの鈍さだよ」
クスクス笑い出す凛。
「でも、直くんらしくていいかも。やっぱ直くんは純粋なんだね」
「それ、バカにしてる?」
「バカになんてしてないよ。純粋な人って少ないんだから。本来の直くんに戻ってきたって感じがして、私は嬉しいよ。ついこの間までは、傀儡みたいな生き方してたしね」
傀儡って……しかし反論はできないな。
社畜として、人形のように操られるままに働いてたからな。
「そう言えば、今の環境って凄くリラックスできてるって言うか、最近感じなくなっていた感情が戻ってきたような気もするよ」
「それだけ追い詰められてたってことだね。うん。やっぱり辞めて良かったね、会社」
「それは本当にありがとう。凛、感謝してるよ」
「っ……」
凛は感極まったような表情をし、大きなカメラをどこからともなく取り出した。
そして俺の写真を何枚も撮る。
「今の照れてる直くんもいい! あ、お兄ちゃん、私と直くんの写真撮ってよ」
「オッケー! 任せろ!」
カメラを樹に手渡し、俺の腕に手を回す凛。
「…………」
凛はまるでモデルのように、俺の隣で何度もポーズを変更する。
その都度、樹はカメラのシャッターを押していく。
「可愛いぞー、凛」
「ちょっと私より直くんのことカッコよく撮ってよね」
「…………」
この兄妹、エレベーター前で何やってんだよ。
俺は唖然とし、なすがままに写真を撮られ続けていた。
撮影会はその後十分ほど開催され、撮った写真をホクホク顔で眺めている凛。
そんなに嬉しいのかよ……
「わーわーわー、直くん今日もカッコいい。素敵素敵!」
どんな写りになっているのか気になり、凛が見ているカメラを横から覗き込む。
しかしそこに写っている俺は至って普通。
どこがカッコよくて素敵なのかよく分からない。
凛はちょっと感性が特殊なんだろうか。
「俺より、凛の方がずっと写りいいじゃないか」
「ええー。そんなことないよぉ」
「何言ってるんだよ。メチャクチャ可愛いだろ」
「へ?」
凛はピタリと固まってしまい、徐々に顔を赤くする。
そして見たことないような困った笑みを浮かべ大慌てし出した。
「ななな、何言ってるの! な、直くんの方が素敵なんだからね!」
「あ、おい!」
部屋の方へ走って行く凛。
その表情はどこか嬉しそうに見えた。
なんで?
「……どうしたんだよ、凛の奴?」
「やっぱりお前は、驚きの鈍さだよ」
「?」
樹は歩きながら肩を竦める。
だからなんで?
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