ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第8話 仕事もせずに家でダラダラ生活していると、凄まじい罪悪感が襲い掛かる。そうなる前に仕事した方がいいと思うんだ。そう思ったらから就職しようと考えました。
第8話 仕事もせずに家でダラダラ生活していると、凄まじい罪悪感が襲い掛かる。そうなる前に仕事した方がいいと思うんだ。そう思ったらから就職しようと考えました。
「いや……養うって、何言ってるんだよ」
「何言ってるって当然のことを言ってるだけだよ」
自分の一番可愛い笑顔というのを理解しているような、そんな笑み。
この笑顔にときめかない男はいないだろうと思えるほど素晴らしいものであった。
しかし当然のこととは言うが、あまりにも理解に苦しむことを話す彼女。
俺は困惑しっぱなし。
「解離性同一性障害」
「え?」
「昨日の直くんの状態のことだよ。限界を超えて、自分のことじゃないように感じてたでしょ?」
「ああ……確かに」
確かに昨日は自分のことが他人のことのように思えていた。
自分で思考しているはずなのに自分のことじゃないような感覚。
いやだけど、なんで凛がそんなことを知っているんだ?
自分でさえもしっかりと理解していないことだったのに。
俺の表情を見て、凛は色々と察したのだろう。
ゆっくりと説明をし出した。
「直くんの情報は常に収集してるからね。些細な変化であろうと、私が見逃すわけないじゃない」
ふふふと笑いながら簡単に説明する凛。
俺ははははと笑いながら寒気を覚えていた。
俺のことどれだけ調べてんだよ、凛の奴!
「ストレス溜めて、限界超えて……やりたくないことはやらなくたっていいんだよ。嫌なら逃げたっていいの」
「逃げるって……そんなことできるわけないだろ。誰かに迷惑かけるし、それにいいことなんて無いだろ」
「できるんだよ。できないって思い込みは、世の中、社会がそう思わせているだけ。本当は嫌なことから逃げたっていいの。逃げて幸せになる人だって沢山いる。だから逃げるのだって正しい選択の一つだってことを理解しないと」
逃げて……いいのか?
会社から逃げて、社会から逃げて……
その後に幸せが訪れる?
にわかには信じがたい。
けど、それが本当なら楽でいいけどな。
「どっちにしても直くんはもう少し心を休める方がいいよ。どっちでも良くはないけど」
「でも、生きていくにしてもお金は必要だし……」
「だから言ってるじゃない。直くんのことは凛が養うって」
「……年下の、それに女子に養ってもらうなんて悪いだろ。そもそも彼女でも何でもないんだし」
凛はムッと顔をしかめる。
そのなんとも言えない迫力に、俺はたじろぐ。
「直くんは養われるだけの価値があるんだよ! 全人類で直くんの面倒を見ないことがおかしいぐらいと凛は思っているの。ちょっと世の中の思考おかしいと思わない?」
「おかしいのはどう考えても凛の方だ! 俺を養おうなんて奇特な考えしているのは凛ぐらいだよ!」
「直くんは自分の価値を理解してないの!」
俺に無いはずの価値を見出し過ぎなんだよ、君は。
俺にそこまで価値なんてないよ。
「年下に養われるのは嫌だって言うけど、老人は子供に面倒見てもらうよね?」
「俺はお爺ちゃんですか!? まだまだ現役で働けるバリバリの若者だって思ってるよ!」
「直くんは若い! でも年下に養われるのがおかしいって考えはナンセンスでしょ? 皆それぞれ環境も状況も違うんだし、養われることだってあるよ。だから直くんが凛に養われてもおかしいことなんて一つもないの!」
おかしいことだらけだけど、妙な説得感がある。
言葉に力があるからだろうか……
いや、盲信的な何かを感じる。
凛の目がどこまでも本気過ぎる。
「と、年下に養われるのはもういいとして……でも凛は樹の妹で……彼女でもなんでもないじゃないか」
「え? 彼女じゃないと養ったらダメなの?」
いいの?
俺が逆に聞きたいよ。
ってか、普通は兄の友人を養おうなんて考えしないから。
やっぱり何もかもがおかしい。
凛はもっともらしく話しているが、全部が狂ってる。
「と、とにかくさ、凛に養われるわけにはいかない……」
「ふーん……直くんって貯金はいくらぐらいあるの?」
「うっ……」
会社からはささやかな手取りしか支給されていなかった。
毎月毎月貧乏暮らしで、なんとかやりくりしていたぐらいだ。
もちろん、貯金なんてできるわけがない。
今すぐに新しい仕事を探さないと、死活に関わってくる。
そして凛はそんな俺の状況を理解しているのだ。
俺に金が無い事を完璧に把握している。
言いくるめる気だな……
だが俺にだってプライドってものがある。
男として、年上として……女の子に養われるヒモみたいな生活をするわけにはいかない!
「貯金は無い……でもこれから稼ぐつもりだ」
「稼ぐって、また社畜に戻ろうとしてるでしょ。そんなの止めといた方がいいよ。さっきも言った通り、嫌なことからは逃げていいんだってば。特に直くんがそんな真似する必要ないんだからね」
「必要ならあるさ。だって俺は男なんだから。ちゃんと就職しないと――」
「やだっ! 直くん男らくしてカッコいい! そういうシッカリしてるところもまたいいよねぇ」
「いや……そんな男らしいとかそんな話してないから」
話が進まない。
何故かデレデレしている凛を見て、俺は唖然とする。
「そういうことだから、俺はこれから就職先を探すことにするよ」
「……ま、直くんがそうしたいのならもう止めないけど。でも、後悔するようなことだけはしないでよね」
「お、おう……」
凛は急に俺が就職することを肯定し始めた。
いきなり態度変えて……どういうつもり?
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