恋の世界を忘れた大人にとってこの作品はあまりに眩しい。美しく、丁寧に、そして緻密に計算されたストーリーです。恋だけではなく登場人物達の人生も丁寧に書かれています。母として、女として、ピアノへの想い、リアルな現実も音楽があることで軽やかに感じられました。響子さんと緑さんの二人の恋の世界はあまりにも切なくて胸が締め付けられました。続きが気になって仕方がないのに結末を読んでしまうのがもったいない…そんな気持ちになる素晴らしい作品です。
切ない。もう分別のつく大人となってしまったからこそのもどかしさを、リアルな世界観が引き立てます。短編ながらこの小説には生活があり、そこに生き続けている人たちがいる。読むごとに引き込まれる物語の結末を是非体験していただきたいと思います。
圧倒的な筆力で主人公、響子の恋希求の世界に連れて行かれます。こころの力の広さと奥行きと、同時に狭窄を体験させられる作品です。 独特な読後感の扱いに読み手困惑、作者の産み出した世界を是非体験してほしい、そんな作品です。