第17話 お披露目
「さあ! 2人とも準備はいいかな〜?」
「「もっちろ〜ん!!!」」
千冬さんは俺より先にリビングに着くと、雪さんと六華に向かってバラエティのMCのような口調で問いかけた。
雪さんと六華も一切の躊躇いなくそのノリに乗っていた。
心の中で配信者って凄いなあ、と思った。
「それでは主役の登場です! どうぞ!」
俺がリビングに姿を現すと、雪さんと六華はリビングに響き渡る大きさの拍手をした。
「え! めっちゃ似合ってるよ、葵くん! もしかして、ファッションの神様?」
「私もそう思います! 葵先輩なら何着ても似合うとは思っていましたけど、こんなに似合うなんて。まるで、モデルみたいです!」
2人が異常なほどに褒めてくるので、照れてしまい顔が熱くなってくる。今の俺は多分、耳まで赤く染まっているだろう。
2人とも褒めるにしてももう少し抑えて欲しかったよ。
「2人ともいくらなんでも褒め過ぎです! そんなに褒められると、なんというか、ちょっとだけ恥ずかしい……です……」
「あっ! そうだよね、ごめんね。でも、私が言った内容は全部本音だからね」
「その言い方、私は本音で言ってないみたいじゃないですか! 雪さん、私も本音でしたよ!」
ちょっと待って。
……ん?
2人ともあれ、本音で褒めてたの?!
あの『ファッションの神様』とか、『モデル』とか言ってたの本音で言ってたの?!
お世辞じゃなかったのか……。
「はいは〜い! 2人ともそこまで! これ以上、褒めちゃうと葵くんが恥ずかしさのあまり倒れちゃうよ?」
「「あっ、ごめんなさい」」
千冬さんが止めてくれたおかげで、ようやく2人の褒めちぎりは終わった。
千冬さん、本当にありがとう!
「それにしても、葵くんが着こなしてるって言うのもあるんだけど、この服装、センス良いよね。さすがだね」
「まあね! ファッションに関しては任してよね」
雪さんが俺の服装に感心しているのをみて、千冬さんはとても嬉しそうにしていた。
俺も自分に似合っているのかは分からなかったけど、この服装選びのセンスはさすが千冬さんだと思った。
上も下もベージュに近い色で統一されている服装だ。
たしか、セットアップの服だったはずだ。
千冬さんが選んでいなければ絶対に着ることのなかった服装だと思う。
「こういう服、着るの初めてなんですけどみんな褒めてくれて嬉しかったです。ありがとうございます!」
「今度は千冬ちゃんじゃなくて、私とも行こうね!」
「あっ、雪さんダメですよ! 私が行くんです!」
2人はまた言い合いを始めてしまった。しかも、俺の奪い合いで。
その言い合いは、数分間に及んだ。
2人の言い合いが収まると、コラボ配信の時間までまだ時間があったので俺たちはこれから何をするか話し始め、みんなそれぞれで案を出すことにした。
みんな少し悩んだ後、自分の案を出していった。
雪さんが映画鑑賞。
六華がトランプ。
千冬さんがゲーム。
そして、俺の番になり、俺も自分の案を言おうとした瞬間。
俺のお腹の音がリビングに響き渡ってしまったのだ。
そう言えば、まだ朝食食べてなかった……。
俺は恥ずかしくて、誰とも目線を合わせないようにした。
そんな俺を見た千冬さんは言った。
「取りあえず、朝ごはんにしよっか」
俺は小さな声で「はい……」とだけ言った。
千冬さんはすぐにキッチンへと向かい、朝食の準備に取り掛かった。俺も手伝おうと思ったのだが、すぐにできるから3人で待っててと言われたので、俺は雪さんと六華とお喋りしながら待つことにした。
それから10分もしないうちに朝食は食卓に並べられた。
「あ、2人の分も作っちゃったけど、もしかして朝ごはん食べてから来た?」
「いや、食べてないから私も食べる!」
「私もまだです!」
千冬さんは2人が朝食を食べてから来たのではないかと不安になっていたが、2人がまだ食べてないことを知り、ホッとしたようだった。
俺たちは食卓につき、4人で朝食を楽しむのだった。
親にも親友にも見捨てられた俺、大人気アイドルVtuberに拾われる。 夜兎ましろ @rei_kimura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。親にも親友にも見捨てられた俺、大人気アイドルVtuberに拾われる。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます