第16話 日曜日の朝

 日曜日の朝、俺と千冬さんはカップルコーデのパジャマを着て眠っていた。


 一度目が覚めたのだが、まだ少し眠れるなと思い、二度寝を楽しもうとした時だった。

 玄関のドアが開いた音がかすかに聞こえ、その数秒後には俺と千冬さんがいる寝室のドアをノックする音が鳴り響く。


「千冬さん起きて! 誰か来たみたい」


「ん……どうしたの葵くん」


 千冬さんを起こそうとするもまだ寝ぼけているみたいだ。俺は誰か不審者が入って来たんじゃないかと内心焦っていたが、実際は焦る必要はなかったようだ。


 ガチャッと寝室のドアが開くと、そこにいたのは雪さんと六華だったのだ。


 俺は知っている2人だったのでホッとしたのだが、その2人の反応は安心しきっている俺とは違い、驚きに満ちた表情をしていた。


「ちょちょちょっと、葵くん? 千冬ちゃん? その服……」


「あっ」


 2人が驚いている理由がわかった。

 そうだった、俺と千冬さんは今、カップルコーデのパジャマを着ているんだった。


 そりゃ、ビックリするよな。

 とりあえず千冬さんに起きてもらわないと俺1人ではこの状況は大変すぎる。


「千冬さん起きて! 助けてください!」


「ん? おはよう葵く~ん」


「えっ!?」


 千冬さんが起きたのは良いのだが、まだ少し寝ぼけているようで千冬さんは俺に抱きついてきたのだ。

 この状況が余計に悪化しそうなんだけど。


「千冬ちゃん、どういうことかな」


「えっ、なんで雪ちゃんと六華ちゃんが……」


 千冬さんは雪さんに声を掛けられたことでようやく目が覚めたようで慌てて俺から離れた。

 目は覚めても状況がいまいち理解できていないようだ。


「今日、4人でコラボやるでしょ? だから、どうせなら早めに行って遊ぼうかと思ってここに来たの。そしたら、2人のそのパジャマ、どういうことかな?」


「あっ、これは……その……」


「嘘は無しだからね」


「えっと、これは葵くんの服を買いに行ったときに見つけたから買ったやつ……です」


 千冬さんは雪さんの圧に押され、正直にすべてを話した。

 雪さんは呆れた様子でため息をついた。


「まあ、私も葵くんと一緒に服買いに行ったら千冬ちゃんと同じことしてたと思うし、今回だけは許すよ。その代わり、今度葵くんと2人で遊びに行かせて!」


「雪さんだけズルいです! 私も葵先輩と2人で遊びに行きたいです!」


 え、ちょっとこの2人何言ってるの?!

 この2人は俺と遊びに行きたいの?


 千冬さんはすこし考え、仕方がないと思ったようで俺に聞いてくる。


「葵くんはいい? この2人は葵くんと遊びに行きたいみたい」


「はい、俺は大丈夫ですけど」


 俺の返答を聞いた雪さんと六華は2人でハイタッチして喜んでいた。

 俺と遊びに行けるだけでここまで喜んでくれるとこっちまで嬉しくなってしまうな。


「あ、そういえば何で急に葵くんの服を買いに行ったの?」


「それは雪ちゃんたちのためだよ。葵くんが今回のコラボのために新しい服が欲しかったみたいだったから買いに行ったの」


「葵くんは本当にかわいいな~!」


 千冬さんが雪さんたちに俺が服を買いに行った理由を教えると、雪さんは嬉しそうに俺に飛びつき、俺の頭をよしよしと撫でる。

 俺、男なんだけどなぁ。

 でも、雪さんに撫でられるのは悪い気はしない。


「それじゃ2人はリビングで待ってて。着替えとか色々準備するから」


「はーい」

「わかりました」


 2人は上機嫌な様子でリビングへと向かって行った。

 雪さんは「新しい服、楽しみにしてるね」と言ってから向かったのだが。


 そんなに期待されると緊張してしまう。


「それじゃ、新しい服を着て準備してリビングに行こうか」


「そうですね、千冬さんが選んでくれた服なのできっと2人も喜んでくれますよね」


「もちろん! というか、葵くんならどんな服でも着こなしてくれそうな気がするけどね」


 俺と千冬さんは着替えたり、色々と朝の準備を済ませてから雪さんと六華の待つリビングへと向かった。



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