第8話「犯人を暴こう」
ナナリーの部屋。
それなのにナナリーは何処か緊張しているようだ。
理由は分かっている。
「や、やっぱり隠し物の事ですか…?」
「話が早くて助かるぜ。で、それは一体なんだ?物によっては
この屋敷で起きた事件…御嬢曰くエスメラルダ邸殺人事件の
犯人じゃないかと疑われるが、その覚悟はあるか」
「うっ…!」
ナナリーの額から汗が噴き出る。アランは不敵な笑みを見せている。
「もう犯人は特定してるんだ。あとはお前が持ってる証拠と
その場での実験ですべて解決ってね」
「ほ、ホントですか!?」
「そうだよ。ナナリーは証拠を持っている。ちょっとした
ブラフさ。さっきの話、嘘でも無いけどね」
ナナリーはハッと口を塞いだ。だが何も間に合っていない。
寧ろ自分から証拠を持っていると白状してしまった。
「そうガッカリすんなよ…ん?ということは犯人が
決まったも同然か?もういっそ、言っちまえよ」
「だ、だって…怒ると凄く怖いんですぅ~~!!!」
ナナリーはアランの両肩をグッと掴んで彼を揺らす。
アランは驚いた。
ルーチェの脳内では情報が整理されていた。
首を斬ることは難しい。力が必要だ。部屋にも何か仕掛けを作った跡も
無かったので斧か何かで首を落とす。そんなことは女性であるナナリーや
シェリアでは難しい。二人は犯人に成り得ない。
アランとミトスは契約に縛られているので最早論外。
ルーチェもその事件があったときは眠っていたし、犯人には
ならない。
唯一、本当かどうか分からないアリバイを持っているのがエドワード。
十中八九、彼が犯人である。
まぁ原作でも彼が犯人だ。そして彼の目的も分かっている。
「吸血鬼を復活させるためにお父さんの愛を利用したって訳ね…」
「ルーチェ様…?」
「お父さんも人を殺してたんでしょ。知ってるんだから。で、黒魔術の事は
エドさんが教えたんじゃないの?こういう方法で奥様を蘇らすことが
出来ますよ~、て」
「その通りです。貴族の人間なので一般的な話では分かりませんが、
普通の人間が黒魔術を調べるなんて普通は出来ないと思いますよ。書が
あったとしても読み解くのは難しい。それらを知っているほど古い時代から
生きていた者がいればすぐにやり方も材料も調べられたでしょう」
ナナリーは最近になってから父親の世話をするようになった。それ以前から
世話をしていたのはエドワードだ。彼を人外であると決定づける証拠は
ルーチェが全員集まっている場所で見せる。
「よし、今日は全員集めるからね!そしてあの頑固なエドさんには
私に負けて貰うわ!」
「精一杯お手伝いさせていただきますよ。ルーチェ様」
この日の昼間。屋敷内にいる人物全員が同じ部屋に集まっていた。
「話を始める前に彼の説明をするね。彼は吸血鬼アイン・ミッドナイト。
ごめんね、皆には内緒にしてて…」
「良いんですよ御嬢様。貴方が隠している理由はすぐに分かりました。
吸血鬼が本当にいるとは思ってませんでした」
シェリアの言葉に周りも頷く。
その後、ルーチェはすぐに真剣な表情になった。
「殺人犯が分かったの。ただ一人だけ、どうしても説明が付かない人がいてさ。
シェリアとナナリーはずっと同じ行動をしてたし、夜は寝てたでしょ。
で、アランとミトスも違う。エドワードさん、貴方だけはどうしても
アリバイが薄い」
ルーチェは彼を見据えた。
「アランかミトスに何か唆されましたか。全く…」
「じゃあ鏡の前に立ってよ。それで何も無かったら幾らでも
怒鳴られてやりますから」
「そんな茶番に付き合ってはいられません」
「良いじゃねえか鏡の前に立つぐらい。何なら横を抜ける程度でも良いぜ?
何もしないで適当に言い訳をして帰るなんて…主人命令は絶対って
俺たちに言ってたのは誰だ?」
アランは挑発するように告げる。エドワードは鋭い視線を彼に向けた。
「アンタが正体を見せたら俺も、俺たちも見せてやるよ」
「何ですって…?」
シェリアが反応する。エドワードも何処か不思議がっている。
「思ってたんじゃないのか?真夜中をふらつく俺たちが一体何時寝ているのか」
エドワードだけではない。
シェリアとナナリーも気になっていた。何時も彼らは朝一で厨房に立っており、
真夜中に巡回している。彼らは寝ているのか?
「御嬢、証拠はあるんじゃねえの?」
「あるよ。この鍵が証拠だね」
見せつけたのは赤い塗装がされた鍵。堂々と地下室と書かれている。
その鍵はルーチェが探偵ごっこをやめるまで隠すつもりでいた物。
ナナリーに絶対隠し通すようにと申しつけていた。
「怒鳴るのは後にしましょうエドさん。僕たち、すでに地下室に行きましたから」
ミトスも微笑を浮かべる。
原作者が主人公になって原作以上にカオスなゲームにする話 花道優曇華 @snow1comer
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