第23話 最終章 無駄遣い

「無駄遣い」


 セリカLB1600ST、71レビン、910ターボ、マキシマルグラン、U11ツインカムターボ、U12アテーサLTD、R32タイプM、R32GTR、アルト、セルボモード、R31ディーゼル、レパードJフェリー、R33GTR、スターレット、プレセア、Z32、ウイザード、マーチ、キューブ、NSX、パジェロイオ、スターレットディーゼル、ディンゴ、コルトプラス、ミニカ、Z33、Z34T(7AT)、モコ、アルト、デュアリス、AZワゴン、リーフ、ランエボX、Z34ST(6MT)、デリカD5、フォレスターXT、Z11キューブ、Z12キューブ、アルト、ハスラー(下線は現所有車)

思い出すままに書いてみました。ワシがこれまで所有してきたクルマたちです。めでたく40台。中古車も新車もあります。通勤のためだけに買った足グルマもあります。トータルいくら使ったのかは恐ろしくて計算していません。また、どのようにして資金を調達したのかもあまり覚えていません。

 今、ガレージにZ34、フォレスター、Z12キューブがあります。普段の足にはハスラーを使っています。

 結果として、貯金はあまりありません。日々の生活はとても質素で、酒は嫌いでタバコはやめて、ギャンブルもパチンコも興味がありません。

 大学を出て、ちょっと特殊な公務員になりました。給料は安かったのですが信用がありましたので、ローンを組むのは簡単でした。また福利厚生が整っていたので、その関係からお金を借りることもできました。そうやって後先考えずにクルマを買い続けていました。時代はバブルに向かってまっしぐらのイケイケムードのなせる業でした。

 35歳の時、調子に乗って仕事を辞めて都会に行きました。これが間違いのもとでした。一年後に身体を壊して、無一文に近い状態で故郷に逃げ帰ってきました。ついでに家庭も失いました。身体を治して臨時職員として働き始めたのが36歳の4月でした。それから再び採用試験を受け続け、やっと採用になり元の公務員に戻れたのが42歳のときでした。ワシは心を入れ替えて真面目に働きました。それから二度目の結婚をして、それから必要に迫られて、大きなガレージのついた小さな家を建てました。

 それでもクルマ好きという病気はまったく治りませんでした。還暦を迎えて定年退職し、退職金は、Z34の残価設定ローンの支払いと新型ハスラーとドラム型洗濯機とエアコンと父の葬儀の諸々と、父の残した猫たちのエサ代や病院代、それから日々の生活代等でもう少ししたら底をつきます。

 仕方がないので、再任用という制度を利用して働いています。慣れない職場で身体に無理が来たのか、得体のしれない肩の激痛、持病の腰痛の悪化、右ひざの痛み、左手親指の関節炎等、これまであまり経験したことがない不調に悩まされています。とどめは、先日、目に違和感があったので眼科に行ったら「緑内障」と診断され、毎日の目薬の点眼と月に一度の通院を余儀なくされました。

 こうやって振り返ると、ワシの人生は無駄遣いばかりだったと思います。賢く堅実に将来のことを考えて生きることができなかったと少し後悔しています。この歳になって、自分の愚かさにやっと気がついた次第であります。

 でも楽しかった。振り返ると楽しい思い出ばかりでもありませんが、クルマたちのおかげで本当に楽しい人生を過ごせたと思っています。

 この4月で仕事を辞めて、ついに無職になりました。実は無職になるのは今回で3度目ですので、慣れてしまっていてあまり深刻に考えていません。自由になったので、旅に出たり自由を満喫したりなど、いろいろやりたいことがありましたが、コロナとネコたちがいるおかげでまったく自由ではありません。

 5時半に起きて、ネコたちにエサをやってトイレを掃除して、7時前に妻を見送ってから1日が始まります。そのとき、妻のクロスビーのボンネットを開けて、野良猫がいないかを確認して、エンジンをかけてタイヤなどを簡単に確認してから妻を送り出します。

 すぐに亡き父親の家に行って、忘れ形見の4匹のネコたちにエサをやり、掃除をします。ネコたちが住んでいるので汚すことが多く、掃除や洗濯をして、時間を見つけては遺品の整理や草取り、墓掃除などをして午前中を過ごします。腰と緑内障の病院通いが月に一度あります。その時は早めに家を出て、早朝から並ぶのでわりと早く終わります。

 昼前には帰ってきて、今度は我が家の用事などをします。やってもやってもきりがありませんが、できる範囲で少しずつやっていますのであまり進みません。4月からやったことは、樋の掃除と草刈りと、車庫の大掃除ぐらいです。

 午後からは、原稿書きをしています。ワシは昔から独りで物を書いたり作ったりすることが好きなので、けっこう楽しい時間です。ときどきこうして投稿しては一人で悦に入っています。しかもお金がまったくかからないので今のワシにはピッタリです。

 午後3時になったら、腰のリハビリと健康維持のために、空港まで歩いて往復します。行きは登り坂で苦しいのですが、帰りは下りなので季節の変わり目を感じながら、楽しくスタスタ歩きます。おかげでなぜか身体が軽くなりました。健康です。

 夕方までにネコたちの世話をして、掃除機をかけて妻の帰りを待ちます。妻が帰ってきたら再び実家の空き家に行って、ネコたちにエサをやって、仏壇の水を代えてから六時半までのは家に帰ります。それから夕食を食べて、テレビを見て、妻のあとに風呂に入って風呂掃除をしたら大体一日が終わります。10時には床に就きます。それからちょっと本を読みながら眠くなったら電気を消して、あっという間に眠りにつきます。毎日ぐっすり眠っています。お金がないこと以外は毎日なんとか幸せだと思っています。

 車庫には3台のクルマと野良猫たちが住んでいます。ネコたちがクルマを汚すのでカバーをかけてありますが、マーキングなどをするので時々カバーを洗います。

 キューブは、日頃の足として、ハスラーとひと月交代で出して使っています。フォレスターは、遠くに行くときや妻の実家に行くときに使っていますが、コロナ禍でそれもままならないこの頃なので、最近は車庫で眠ったままになっています。調子を維持するためにときどき出して乗りますが、最近は億劫になってきました。8年で三万キロ弱しか乗っていません。売却も考えましたが、悪天候の時や雪の時など、これ以上の頼もしい相棒はいませんので、ずっと所有しています。来年の10月になんと4回目の車検を迎えます。定期点検は半年ごとにディーラーに出しています。日頃は空気圧とガソリン満タンと、汚れたまましまわないことに気を付けていますので絶好調です。直噴ターボの280馬力で見かけによらずものすごく速いのが自慢です。またスバルのターボ車の特徴であるボンネットの不細工な穴がないところも気に入っています。インタークーラーの冷却はフロントグリルからパイプを引いて導風しているので穴は必要ないのです。

 それからZ。ほとんど乗らないので売ってしまおうかと何度も考えたのですが、それでも時々出して乗るたびに、その素晴らしさというか気分に魅了されてしまいます。来年の1月が3回目の車検です。お金もないし仕事もないので維持が大変なのですが、このクルマがないとワシは気力が消失して死んでしまいそうなので、たぶんものすごく無理をして、あるいはサラ金で借金してでも車検に出したいと思っています。

 これまでにもお金がないことが原因で、虎の子のクルマを何度か手放したことがあります。そのたびにものすごい無気力感に襲われ心から後悔しました。後悔してまたちょっと余裕ができたら買ってしまうことの繰り返しで、考えてみると大損失だったと思います。結局、売らないで静かに維持することが節約になることが分かりました。

 Zに乗るということは、自分自身が若返ることだと思います。気持ちがいいのです。それから、ちょっと本気で走るときも、音楽を聴きながら法定速度で流しているときも、ワシのとってはとても居心地のいい最高の空間です。また、Zを所有していると、ワシはZが最高だと思っているので、レクサスが来ようがフェラーリが来ようが、はたまた友達親友友人知り合いがどんなクルマを買っても持っていても、まったく気にならない、うらやましいとも思わない、欲しくもならないという効果もあって、ある意味最高の節約と心身の解放と癒しと自己満足になっています。

 なしてそんなにZが好きなのかと聞かれたら、ワシもなしてかわかりません。GTR、NSXなどもっと速くて高いクルマを所有したこともありますが、それよりもワシはZに魅力を感じています。名前もええですしね。Z(ゼット)「好きなものは好き。」としか言いようがありませんが、Zには他のクルマにはない雰囲気というかロマンというか、そんなことを感じてやまないのはワシだけなのでしょうか。


 こうやってダラダラ綴ってみると、ワシの人生は無駄遣いばかりのように思います。今は残り少なくなった人生の時間の無駄遣いをしています。

 でも結構幸せで、無駄遣いも捨てたもんじゃあないのうと感じています。


「クルマについてのエトセトラ」

この辺で一応終わりたいと思います。

こんなどうでもいい文章を読んでくださった皆様方。お言葉をかけてくださった方々。応援してくださった方々。本当に感謝しています。

ありがとうございました。



 

 

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クルマについてのエトセトラ 詩川貴彦 @zougekaigan

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