第34話 番外編 其の三 七滝龍 side

 俺がアイツに話しかけたのは、クラスで自己紹介をしていたあの日。

 アイツの自己紹介は普通であるが、普通ではない気がした。


「東中から来ました、平幡ひらはたはちです」


 ここまでは大丈夫だが。


「自分からは話しかけるのは苦手ですが、話しかけて貰えれば会話するので気軽にどうぞ。よろしくお願いします」


 これは誰も話しかけないな、ふざけたヤツしか来ない。

 でも、俺はこう思った。


 


 だから声をかけた。


「俺、七滝龍」

「平幡八」

「八って、忠犬ハチ公?」

「違う!」

「あはは!」


 確信した、コイツと友達になれるって。

 その後はよく話すようになっていた。

 ある日の昼休み。

 十田とださんとの出会いの話を聞いた。

 本当に人に興味ないヤツだなと思った。

 だが、どんな子なのか、ちょっと気になった。

 するとタイミング良く勉強会が開催された。

 その時に十田さんとはじめまして。

 そして、個人的なことで1つ。

 坂町さかまちこずえちゃんとの運命の出会い。

 今だから言えること。

 十田さん、梢ちゃんと来てくれてありがとう。

 十田さんは俺と梢ちゃんを出会いへ導いた愛のキューピッドだ。



 夏休みに4人で海を見に行って、その時に梢ちゃんとコンビニへ向かった。

 十田さんとアイツの時間を作るために。

 だが2人の進展は名字呼びから名前呼びになっただけ。

 夏祭り・文化祭・球技大会という3つのイベントで進展するタイミングはあったはずだ。

 だが、ヘタレなアイツが発動して、何も言えずに現在にいたる。


 早く伝えろ、アイツは悲しみに耐えられる力なんてない。

 そんな気がする。


 出来れば、幸せになってほしいのに。 



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