第30話 時間の流れ
2月のある日のこと。
男子共がそわそわしていた。
俺は動じない。
ふりです。
心の中はめちゃくちゃそわそわしています。
「今日が平日で良かった」
「
「ふっ、たくさんはいらん」
「はぁ?」
ドヤ顔で彼はこう言った。
「あの子が作ったチョコだけを有り難く受け取る。これぞ彼氏としての礼儀とけじめ」
「ふーん」
やっぱりな、アホ。
「ムードのある情景が目に浮かぶ」
お前、本当に本当に、学年末テスト落ちろ。
「毒吐いた?」
「バレたか」
「毒吐いて貰わなきゃ、な?」
「待ってるんかい!」
高校生になっても、義理でも良いから1つは欲しいもの、かもしれない。
もうお分かりでしょう?
バレンタインデーです。
誰が作ったんだか、男を惑わし、天と地の分岐点となるこの日を。
まあ、今は友チョコだなんだとあるから、何でもありなんだろうけど。
やっぱり1つは欲しいよね?
好きな人気になる人からは特に、頂けるのなら頂きたいものだ。
※
放課後の喫茶店・
「はい、
「ありがとう」
目の前にいる
「お口に合うか分からないけど」
「頑張って作ったんだろ?」
「もちろん!」
「なら美味しいさ」
可愛らしくラッピングされた箱。
「これ聞いて良いのかわかんないんだが…」
「?」
なんだろうって顔をする和。
今から言う言葉を聞いたらどんな反応になるのか。
ゆっくりと俺は言った。
「本命?」
「!!」
真っ赤になった和。大丈夫か?
「は、はい、そう、でひゅっ」
ん?噛んだか?
「もう聞くなんてずるい!」
怒られたー!?
「悪かった悪かった」
「うぅっ」
涙目にならないで!
懸命になだめることに徹した。
思ったこと、反応が可愛すぎるだろ!
※
2月下旬。 各クラス、最後の一致団結。
絆が試される(?)、球技大会が行われていた。
俺のクラスは順調に男子はバスケで、女子はバレーで準決勝まできていた。
「ここを越えると決勝、そこで勝てば優勝!」
熱血大好き
「俺はメンバーじゃないから頑張れや」
「卓球、おつ」
「うるせぇわ!」
個人戦とダブルスで出た卓球。
準々決勝で敗退しました。
健闘したと思って前向きに。
「勝てよ」
「当たり前さ!クラスのた…」
あれ?区切った。
七滝の目線を追うと、あっなるほど、そゆこと。
「龍ちゃーん!頑張ってー!」
「
あれ?てことは…。
「よしっ!梢ちゃんにカッコいい俺を見てもらうために頑張る!」
クラスのためにが、梢のために大幅変更しやがった。
愛の力で、クラスの運命を良好にしてくれ。
はぁ…お幸せに。
※
「あら八、出る競技ないの?」
「ないから来た」
「お疲れ様、八君!」
「ありがとう」
和と梢と一緒に七滝が出ているバスケの試合を見守っていた。
「頑張ってー!」
「はーい!」
梢の応援を原動力にその都度シュートを決めて、スリーポイントまで決める七滝は天才か。
「七滝君って弱点ないのかな?」
俺もそう思っていたな、最初の頃は。
だが、しかし。
「そんなのあるだろ」
彼を知れば分かること。
「あるの?」
和は首を傾げる。
まだ分からないか。なら答えを言おう。
「梢」
「あぁ、なるほどぉ」
納得した和。
「愛ですね」
「愛ですな」
俺と和は頷いた。
「はぁ…うっとりするくらいカッコいい!」
キャッキャッしている梢の様子を見て、このままそっと離れても問題ないと判断。
和の肩をポンと叩く。
「?」
「しーっ」
俺と和はそっと体育館を後にした。
※
「終わる頃に戻れば大丈夫だろう」
「んだね」
こっそり2人で屋上にいた。
「んーっ!寒いねー」
「太陽あるからマシかな」
ここに来る前に教室に寄ってコートを取って着てからここにいる。
「ねぇ八君?」
「なんだ?」
和は微笑みながら、確認するようにこう言った。
「ここで会ったんだよね、私と八君」
「急にどうした?」
おかしなことを言うなーと思いつつ。
「なんか振り返りたくなって」
「なんだそりゃ」
どうしたんだよ、本当に。
でも、和の言う通り、ここで会ったんだ、君に。
「なぁ、泣いていた理由、そろそろ解禁しないか?」
「どーしよっかなー?」
とぼける和。
「遊ぶな」
「ふふふ」
楽しくて他愛ない会話。
「じゃんけんして勝ったらね」
「言い出しっぺは大抵負ける」
「そんなの知らないなー」
とか言って、じゃんけん開始。
「「じゃーんけーん、ぽん!!」」
俺はグー、和はチョキ。
「ほらな」
「ほんとだー!」
ちょっと悔しがる和。
「では、お約束通りに」
「承知しました八さまー」
何故か一礼をした和。
「あの時ね、自己紹介で緊張し過ぎてね」
「うん」
「倒れたの」
「えっ?」
「気付いたら保健室のベッドの上」
「そうだったのか」
「だから恥ずかしくなって泣きながら飛び出して、屋上にいたの」
繊細だな、和は。
とっさに俺は和の頭を撫でた。
「八君?」
「頑張ったのに倒れたとか、そりゃ恥ずかしいよなって思って」
「ありがとう、八君」
いつ見ても守ってあげたくなる、それが君。
よしよし、と。
「お願い」
俯いた和。
「今だけ、今だけ…」
どうした?
和は俺に抱き付いてきた。
「和?」
「お願い、何も聞かないで、このまま」
だから受け入れて、優しく抱き締めた。
しばらく無言でいた。
チャイムが鳴った。
「時間、だな」
「あっ、うん」
離れた俺たち。
「ごめんね、いきなり」
「ううん、大丈夫」
「ありがとう、八君」
「さっ戻るぞ」
「うん!」
何もなかったように屋上を出た。
体育館に戻ると、出入り口にいた先生に怒られた。
が、すみませんと2人で言って頭を下げている時に、目を合わせて笑い合った。
男子のバスケと女子のバレーは準決勝を突破したが、3年生には勝てずどちらも準優勝に終わったとのこと。
クラス応援も良いが、こっそり抜け出すのも悪くない。
そう思った。
※
「おーい梢ー」
「何よ八?」
当たりが強いな。
「和は?」
「なごみん?休みよ」
「3月、1回も来てなくないか?」
「それは、その…」
なんか知ってんな。
「言え」
「嫌」
「なんで」
「約束守る」
「おいおい」
和、口止めしてんのか。
「言え」
「嫌なことはいーや!」
「分かったよ」
諦めた。教室に戻ろう。
「ちょっと」
「なに?」
「…今日なごみんのお姉さん、喫茶店の
なるほど。
自分からは言えないから、姉に聞けということか。
「ありがとう」
「内緒よ、なごみんに言わないでよね」
「分かった分かった」
守秘義務は守りますとも。
授業中はあまり集中が出来なかった。
早く放課後になれ。
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