第28話 特別な夜
「メリークリスマス!」
「「「イェーイ!」」」
クラッカーからカラフルな紙テープたちが音と共に一緒に催しを彩る。
ナポリタンやカルボナーラ、山盛りサラダなどなど。
何故かお寿司まであった。なんで?
どれも美味しくて、会話が弾んだ。
この会に参加しているのは、いつものメンバーである俺・
そしてもう1人。
「めぐ
「良いじゃん、可愛い母校の後輩達と一緒にいるんだしー!迎えくるから大丈夫大丈夫!」
「そういう問題じゃない!」
和の姉である
夜だから妹が心配で付いてきたらしい。
尾沢さんとは大学の同級生とのこと。
「愛、妹の言うこと聞いたら?」
「無理無理、エンジン入ったから」
「全く…誰から酒の飲み方を学んだんだか」
「うーん…さりたそ」
「私じゃないわー!」
尾沢さんと愛さん、仲良いんだな。
周りを見ると、豪快に食べる花野先輩。
これで太らないから不思議でならない。
犬館先輩は相変わらず彼女である花野先輩を見守りつつ楽しんでいる。
一方で梢と七滝は談笑しているが、なんか危うい。
このまま2人でどっか行きそう。
みんな楽しそうだ、良かった良かった。
そう思っていると「
隣を見ると和がいた。
「みんな楽しんでいるね」
「同じこと思ってた」
「本当に?」
くすくすと笑う和。
やっぱりここにいる時は君が隣にいると落ち着く。
「夏休みみたいに、冬休みもこうしてみんなに会えるって良いね」
「んだな」
「いつも思うの。楽しい時間が永遠に続けばいいのにって」
「欲張りだな」
「確かにそうだ!」
「でもそれだけ和にとって大事なんだろう?」
「うん、とってもとっても!」
力強く言った君の瞳に潤みが微かに見えた。
時間はあっという間に過ぎていく。
※
「今日はここまでー!」
「「「ありがとうございました!」」」
クリスマス会は無事終了。
お腹いっぱい食べてしゃべったからか、若干眠気がきている。
「今日はありがとう!よいお年をー!」
「よいお年を!失礼します」
花野先輩と犬館先輩の2人は先に帰っていった。
次に梢と七滝が「よいお年をー!」と言って、手を繋いで帰っていった。
「さてさて、妹よ!帰るぞー」
「ううっ、お酒くさっ」
「お姉ちゃんに臭いって言うな!」
「だって臭いもん!」
姉妹ですな、仲良しじゃないか。
出入り口に近づく前に愛さんは俺の所にきた。
「
「はい」
「可愛い可愛い愛しの妹を泣かしたら許さないから!」
「めぐ姉!?」
いきなり何!?
そして耳元に顔が、うっ…鼻に刺激がするくらいに、すまん本当に臭い。
なんか、鼻に臭いがこびりつきそう。
「ちゃんと言ってあげて、待ってるんだからうちの妹」
小声であったが言っていることは分かった。
俺は頷いた。
「んじゃね、よいお年をー」
そそくさと愛さんは店を後にした。
「めぐ姉、何か言った?」
「あー、黙秘」
「あっ!それ私の!」
「いつから?!」
他愛ない会話は置いといて。
「ほれ」
「?」
隠していたモノを和に渡した。
不思議そうに和はそれを見てから、顔を上げた。
「これは?」
「帰ってから見なさい」
「うん」
ここで開けられると、こそばゆくなりそうだし、ガッカリしたらっていう心配と緊張をしてしまうから。
「じゃあ、よいお年を」
「よいお年を」
名残惜しい感じに言葉を交わして、和は店を後にした。
少し待ってから俺も店を出た。
君にあげたクリスマスプレゼントは正解か不正解かは分からない。
一生懸命考えた結果が、喜んでもらえると願って。
コートのポケットに手を突っ込む。
吐く息は白い。本当に冬だな。
「おっ?」
見上げると雪がチラチラと降ってきた。
ホワイトクリスマス、なんて言葉があるが、毎年クリスマスの日に雪は降るので有り難みがない。
都会だと喜ぶんだろう? ちょっと羨ましいかな。
雪が降っただけで、喜ぶ地域があるなんて良いな。
「寒い寒い、さっさと帰ろう」
今年はクリスマスぼっちから脱出。
初めて友達とクリスマス会、ありがとうございました。
そこに君もいて、俺は幸せな気持ちで帰宅した。
来年は2人きりで過ごしてみたいな。
※
和 side
「なんだろう?」
自分の部屋で、八君から貰ったプレゼントを机の上に置いてじっと見ていた。
「開けよう」
チェック柄の紙に包まれていて、赤いリボンで結ばれていた。
丁寧に丁寧に包装を解いていく。
箱が現れた。
開けてみると、可愛らしいウサギのヘアピンが入っていた。
「うわぁ!」
初めて友達とクリスマス会。
初めて好きな人から貰ったプレゼント。
「大切にしよう」
髪切ったから、そうだ!
制服の胸ポケットにつけた。
いつもの制服が特別に見えた。
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