第22話 楽しいはずなのに 前編

 文化祭準備期間に入った。

 他の学校だと前夜祭と後夜祭をやるらしいが、俺の学校は前夜祭も後夜祭もしない。

 独自の2日間を駆け抜ける。

 1日目は在校生のみで、この日は各クラスのステージ発表をして、その中から上位3クラスは2日目も披露する。2日目は学校を開放して一般来場を受け入れて、教室の催しを活気良くやる。

 うん、なかなかハードだな。疲れる。

 それと、新生徒会長となった花野はなの先輩の有無を言わせぬ独断でカラオケ大会を開催することになった。

 やりたい放題、と言っていたから有言実行出来たようだ。

 恐ろしい人だ。

 先輩といえば、俺となごみがそっといなくなった後に、犬館いぬだて先輩は花野先輩に告白。

 気持ちをきちんと知っていたことに、花野先輩は凄く驚いていた、とのこと。

 それで花野先輩は「よろしくね、恋人も書記も」という、ヘンテコな返しではあったけど、無事に恋人になったとさ。

 そうなんです、新生徒会長と新副会長の最初のお仕事というのは、会計と書記をスカウトすること。それで犬館先輩は書記として生徒会の仲間に。

 この話を和と一緒に先輩方から聞いた時、花野先輩らしい返事ですなと思った。

 和もケタケタ笑って祝福した。

 てなわけで、今はというと、準備期間前から家庭科室で、料理部の人達がつゆ作りに力を入れていた。

 市販のうどんとそばに合って、納得のいくつゆを完成させる為に、「このつゆ欲しい」と言ってもらえるように、時間をかけていた。

 一方、教室では長テーブルの配置決め、調味料をどうするかなど考えるチーム、教室を華やかにするべく飾り付けと看板制作チームに分かれて作業をしていた。

 俺と七滝ななたきは飾り付けと看板制作チームで作業していた。

 その中の折り紙で作る輪っかの飾りを作っていた。


「どんどん賑やかになるな」

「本当にここ俺らのクラス?」


 疑ってしまうくらい見違えていた。


「チラッとこずえちゃんのクラス覗いた」

「お前は気持ち悪いくらい好きだな梢のこと」

「当たり前だ」


 学年一の秀才は恋人に首ったけ。

 梢と付き合っても順位は落ちない不思議。

 地味に点数落ちろ、なんて思うやついるだろうな。


「それでどうだった?」

「夢の国」

「聞かない方が良かったな」

「衣装は当日にとっておくことに決めた!」


 教室を覗いただけで、こいつの頭の中こそおとぎ話状態なんじゃないか。


「洋でも和でも、俺の嫁に似合わない衣装はない!断言する!」


 俺は七滝の頭を軽く叩いた。

 一生惚気てろバカ!とツッコミながら。



 あれよあれよと、文化祭前日。

 家庭科室にクラス全員集合した。

 うどんまたはそばの試食会が開かれた。

「美味しい!」「お店に負けない!」「つゆ最高!」と、大好評であった。

「美味いな」と俺。

「うん、市販のうどんとそばに魔法がかかったかのように、つゆが良いから飽きないね」と七滝。

 胸を張って自信を持って提供できる、うどんそばになりました。

 この後は後片付けをしてから教室に戻り、教室の最終チェックをして解散となった。



 なごみ side


 明日、彼は驚くだろうな。

 だって言っていないから。

 貴方にだけ伝わればそれで良い。

 想いよ届け、そう祈って明日を迎えよう。

 



 


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