第21話 文化祭というビッグイベントがくる

 中間テストが終わった途端、校内は文化祭に向けての話で盛り上がっていた。

 高校最大のイベント、文化祭。

 中学校の文化祭もそうだが、俺には関係ない世界。

 楽しいの“た”の字も自分にはなかった。

 でも今年でクソみたいな自分とはおさらばのようだ。

 だって、きっと、大丈夫な気がするから。


「文化祭の催し楽しみだね!」

「ああ」


 目の前にいる君のおかげだな。


「お化け屋敷に喫茶店に外だと屋台!ステージなら劇とか歌唱とかバンドとか!」


 俺となごみは喫茶店・みずうみにいて話していた。

 楽しそうに文化祭あるあるを和は言っていく。


「全部堪能したい!」

「欲張りだな」

「えへへ♪」


 本当に楽しみにしてるんだな。


「和は1番何やりたい?」

「んー、決めらんない!でもね?」


 おっ何かあるようだ。


はち君と一緒に校内を回りたいな」


 照れながら恥ずかしながら和は言った。


こずえじゃなくて?」

「梢ちゃんは七滝ななたき君と一緒でしょ!」


 頬を膨らませている。怒ったかな?

 変なこと言った覚えはないのだが。


「なんで分かんないかな」


 和、ボソッと一言。

 これは謝った方がいい?


「ごめん」

「いいよ、!」


 やはりご機嫌斜め、すまん。



 俺のクラスはステージの出し物をせず、教室で出来る事に重点を置いた。

 あくびをして、ぼーっとしている間に決まっていた。


「では、うどんそば屋に決まりましたー」


 拍手。

 地味だな、でもクラスに合っている。


「へいらっしゃい!とか言うのかな?」

りゅう、ふざけなくていい」


 となりの七滝ななたきは浮かれすぎ。

 どんだけ楽しみなんだか。


「あっこずえちゃん」

「スマホいじんな」

「梢ちゃんとこのクラスの情報をいち早く知りたいじゃないか」


 はあ、ため息。


「メイド喫茶…」

「おい」


 七滝の興奮が鼻血となって現れた。

 バカかよ、全く。

 すかさずポケットからポケットティッシュを出して、七滝の鼻に突っ込んだ。



 のんびり坂道を和と2人で下る。下校中です。


「メイド喫茶ねぇ」

「裁縫部の子達が可愛いメイド服を作るって!」


 手間と時間が凄そうだ。


「和はメイドやるのか?」

「厨房は無理だから、自動的にメイドさんを選択したよ!」


 七滝のように興奮はしないが、和はメイドさん似合うと確信しているし、見てみたい。


「楽しみにしていてね!」


 満面の笑顔。ノックアウトです。


「ステージの催しはやるのか?」

「うん、やりたい子達がやるって事で決まったんだ」


 それが良いよ。やりたい事をやる。

 それでみんな楽しい、一件落着。


「はぁー、本当に楽しみだなぁ」


 沁々と言う和。


「だな」


 俺も楽しみにしている。

 たった1日だけ非現実になる魔法の日。

 その日を作る為に準備をする。

 普段白黒のような校舎が、色をつけてどんどんカラフルに賑やかになる。

 さぁ、どうなることやら。

 一体どんな世界が広がっているのやら。

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