第18話 何かが進む
2学期が始まった。
いつも通り坂道を登っていると「
「おはよう
いつもの明るい君だった。
あの夏の帰りは、気まずい雰囲気で、無言で歩いた。
和の親が駅近くのスーパーの駐車場に迎えが来ていたので、そこで解散。
この日まで連絡はしていても、会ってはいなかった。
繋いでいた手を離した時、どうしようもない程に淋しく感じた。
本当に淋しくて淋しくて、何故か泣きそうになった。
こんなの初めてだった。
「ねえ八君ってば!」
「うわっ!」
「聞いてる?」
首を傾げて俺に問いかける和。
「何の話?」
「んもお!どうしたの?」
「別に何も」
じと目で俺を見る和。
「しっかり聞いて!」
「すみません」
怒られた。
早く機嫌直れ。
「ある先輩から選挙のお手伝いを頼まれててね」
「選挙?」
「生徒会選挙だよ」
「ああ」
2学期最初のイベント、生徒会選挙。
和に知り合いがいたとはな。
「先輩とはどういう関係?」
気になったから聞いてみた。
「いとこ!」
いとこ、へぇー。
モヤッとしたが、次の言葉を聞いて一瞬にして消えた。
「大丈夫、お姉さんだから!」
安心した。
「もしや、お兄さんって言ったら焦った?」
「やめなさい、からかうな」
「ふふっ」
楽しそうだ。でも、なんだか無理しているような。
「なごみーん!」
振り向くと手を振る見覚えある女子生徒。
「
和も手を振る。
すると走って向かってきた。怖い。
ん?梢の隣には・・・何で?
「着いたー、おはよう!」
「おはよう
「おはよう!梢ちゃん、
七滝、お前まさか。
「よっ!」
挨拶が爽やかすぎだろ、なんかムカつく。
「うっす」
「そっけないな」
「
別に良いが、止めとけということ。
「まあな、だって彼氏だからさ」
「へぇー、そうな…はっ?」
俺はフリーズした。
「耳がおかしいのか俺」
「事実を言ったまで」
おかしくない、ということは。
「お付き合い、か?」
「そうだよ」
いつの間に。
「いつ?」
「海に出掛けたあの日。コンビニに梢ちゃんと一緒に行った時」
「龍から?」
「当たり前だろ」
すげえな。
「会った時から、ときめいていたからさ」
一目惚れってやつかよ。
「尊いよ、梢ちゃんのあの笑顔」
そういえば、和と梢がじゃれていた時にも言っていたな。
あの時はキモッて思っていたが、梢に対してだったのか!
「お前、梢に甘いな」
「当たり前だ、彼女の願いは全力で叶える」
「はいはい、ごちそうさま」
「聞け」
「嫌だね」
すると「ちょっと早く来なさいよー!」と梢が呼ぶ。
「今行くよー梢ちゃーん!」
人が、声が、変わった。
「行くぞ」
「へいへい」
こんな親友、見たことない。
これから七滝と梢がバカップルに発展していくことを、この時はまだ知らない。
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