第16話 お誘い

 夏休みも終盤に差し掛かっていた。

 ダラダラと日々を過ごしていたある日。


『お祭り、一緒に行かない?』


 なごみからメッセージがきていた。

 俺は即答で『いいよ』と返す。

 すると秒の早さで『ありがとう!』と返ってきた。

 祭りか。浴衣着てくるのかな?

 似合うだろうな。楽しみだな。

 あっ…。これってデートってやつか?

 だとすると、どうしよう。エスコートなんかできん。

 てなわけで、『困った。和から祭りに誘われた、OKしたけど』と、七滝ななたきに相談。

 これもまた秒できた。


『ついに初デートか~笑』


 (笑)ってなんだ!?


『エスコートの仕方が』

『自然体でいればいいさ、難しく考えんな』


 相談した相手を間違えたか?このモテ野郎が。


『とりあえず、ちゃんと彼女を見ておくこと。容姿はきちんと褒めること。そして、はぐれないように手を繋ぐこと。それさえ出来ればなんとかなる、以上』

『了解』


 七滝のアドバイスが役立つのか不安になってきた。



 祭り当日。屋台を巡り、山車やお囃子を見て、最後の花火大会を満喫する方針である。

 緊張で1時間も早く来て待っていた。

 昨日は眠れなかった。それだけ緊張している。

 ふと改札口を見ると、来た。

 カラカラと草履の音が響く。

 見違える程の美少女と化していた。


「こんばんは!お待たせ!」

「こんばんは」


 髪を纏めて、うなじが露に。こんなのダメだ。

 紺の浴衣で、金魚が映えていた。


「浴衣…似合ってる」


 自然に口から出た。


「あっ、ありがとう」


 和は顔を真っ赤にして恥ずかしがりだした。


「行こうか」

「う、うん」


 ぎこちない会話だった。

 俺は、1番にはぐれるのは流石に不味いと思い、サッと彼女の手を握った。


はち君?」

「はぐれないように」

「そっ、そっか」


 頷いた彼女。

 なんだか嬉しそうに見えた気がした。

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