第15話 夕日

 日中は太陽に照らされた海は、宝石のようにキラキラと輝いていた。

 その海は今は落ち着いている。

 子供のような海から大人な海に見える。

 それは夕焼けが広がっているからだ。

 茜色の海。この時間帯は涼しくて過ごしやすい。

 うだるような暑さはどこへやら。

 七滝ななたきこずえは2人で近くのコンビニに行ってしまった。

 俺はというと、十田とだと海を見ている。

 隣にいる気になる女の子。

 そういえば、今日ちゃんと見たのは初めてかもしれない。

 見慣れた制服とは違って、白いワンピースを着ていて、それに合わせてなのか、髪を結わずにストレートヘアだ。

 心地よい風にサラサラと優しく揺れている。

 そして、麦わら帽子をかぶっている。

 夏なんだな…。

 それでいて、見たことのない所が出ていると、ドキッとする。

 肌、白いんだな。

 外なんて本当は知らないのではないか。

 そう思ってしまうくらいに、綺麗な白い肌だ。


平幡ひらはた君」

「あっ、はい」


 呼ばれて動揺して変な声を出してしまった。

 しかも、あっ、てなんだ自分!


「借り物競争の時、いきなり引っ張ってごめんね。嫌だったかな?」


 あの時のことを気にしていたのか。

 不安な顔で俺に問いかけた。


「嫌とは思ってない。驚いただけ」


 すると彼女は安心した表情に。


「なら安心した」


 ギラギラの太陽に照らされた君より、夕日に照らされた君の方が良いな。


「ねえ平幡君」


 いたずらっ子な表情、それは反則。


「これからは、はち君って呼んで良い?」


 下の名前で呼ばれた瞬間、心臓が激しく鼓動した。


「私のことは、なごみって呼んで」


 優しく微笑む彼女は、首を傾げて念を押す。


「ね?」


 落ちた。


「分かった」


 俺から言おう。


「和」


 俺は君のことが好き。

 やっと、自覚した。

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