第14話 君のことをもっと知りたい
体育祭の後は流れるように過ぎ去り、学期末テストでは現状維持で終わり、夏休みを無事に迎えた。
部活に入ってはいない為、暇な日々は続く。
宿題?それは終わらせた。
夏休みが始まる1週間前から宿題のある科目は全て配られていた。
だから、渡された日からさっさと終わらせたということである。
残しているのは読書感想文のみ。
これは、ぼちぼちやるとして。
おかげさまで、ごろごろ出来る、ずっと寝ていられる。
ただやはり、することがないから困る。
スマホから着信音が鳴った。誰だ?
画面を見ると
メッセージアプリを開くと、こんなことが書かれていた。
『今度の日曜、海を見に出掛けないか?』
『野郎2人はキツい。止めとけ。』
『いやいや、
ドキッと、鼓動が大きく打つ。
あの借り物競争事件から意識している人・十田。
あの日以来、実は会わなかった。
どんな顔していれば良いのやら、分からなくて怖くて。
『とりあえず、集合場所や時間は後で。んじゃ』
七滝は何を考えてんだ、全く。
心が少しざわついた。
※
日曜日。待ち合わせ場所に、集合時間の30分前に着いた。
ざわざわ、うろうろ。
人通りが多すぎる場所だな、駅だからな。
そわそわし過ぎて落ち着かない。
久しぶりに会うから緊張している。
仮病で帰ろうかな。本当に逃げたい。
そんな気持ちでいると。
「「あっ」」
十田がいた。いつの間に。
「おっす」
「おっ、おはよう!」
いつも通りなんだが、少し緊張感がある。
「久しぶりだな」
「うっ、うん」
互いに黙った。ダメだ、何を言えば良いのか、頭の中が真っ白だ。
話題が思い付かない。
あぁ、早く来てくれ七滝と
十田と一緒に他2人を待つ。
会話はない。
緊張感が張り詰めていて、外部の音は一切耳に入らない。
無言のまま待つと、七滝と梢は集合時間の10分前に到着した。
全員揃った所でバスに乗って出発した。
1番後ろに座り、向かって右側から俺、七滝、梢、十田の並びとなった。
十田と梢は楽しそうに会話をしている。
バスに揺られていると少し眠気が襲ってきた。
そんな時、七滝が話しかけてきた。
「緊張してるのか?」
「なんだよ」
七滝はくつくつと肩を揺らして笑っている。
「おかしいから」
「うるせぇ」
そんなにバレバレか?
「落ち着け、チャンスは必ずくる」
「何を言ってんだ?」
「その内わかる」
まさか、七滝と梢は何か企んでんな?
やれやれ。ため息をつくと、眠気はどこかへいってしまった。
※
バスから降りて、今度は電車に乗って降りて、またバスに揺られて数時間。
「うわぁー!」
「すごーい!」
女子2人は海を見るやはしゃいでいる。
一方、野郎2人は借りたパラソルの下にいた。
普通、逆じゃね?
「男同士、相合い傘」
「気持ち悪い」
「あはは、だな!」
ケラケラ笑っている七滝にちょっとだけイラッ。
「聞いても良いか?」
「何を?」
グイッと顔を近付けてきた。えっ何々!?
「十田さんのこと、どう思ってんだよ?」
グサリと心に突き刺さった。
七滝は離れた。
「自分の気持ちに素直になれよ」
七滝はそれだけ言って、女子2人の所に向かった。
彼女のことをどう思っているのか。
言葉に表すなら、あの言葉しか浮かばない。
当てはまるのは、その言葉しかないからだ。
出会い方はさておき、あの日以来、たくさん会話した。
喫茶店で時を忘れて、他愛ない会話をした。
それが積み重なって思うことは、一言。
君のことをもっと知りたい。
この一言に尽きる。
ふと十田を見る。
笑顔が素敵な、どこか抜けている女の子。
でも何故だろう・・・。
どこか儚げな雰囲気が拭えない。
ちゃんと見ていないと、どこかへ行ってしまうのではないか。
不安になる。
唯一、怖い思いは、伝えてしまった後のこと。
この関係が壊れてしまわないか。
ただそれだけ。
パラソルから出る気になれなくなった。
隣にいたら、この心臓の鼓動が聞こえてしまうと思うと、とても恥ずかしい。
だから、遠くから見守る。
たまには、な。
また後で、他愛ない会話をしよう。
海ではしゃぐ3人を俺は静かに見守っていた。
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