第13話 初めてでした

 十田とだなごみ side


 自分の部屋にて。

 はぁ…疲れた。

 でも楽しかった。

 初めての体育祭。小中ではから。

 特別な日になったなぁ。


 それにしても、あの時はドキドキした。

 借り物競争を楽しみにしていた私。

 お題は何かな?と、特に気になっていた。

 もし、お題が親だったら恥ずかしいけど、家族なら姉も見に来ているので、頼ろうと思っていた。

 こずえちゃんは実行委員のお仕事で、「頑張ってね」と言われた。

 スタート地点。50メートル先に長テーブルがある。その上に封筒があった。

 何が書かれているのだろう?


「位置について!」


 あっ、始まる。


「よーい・・・」


 バンッ!

 ピストルの音を合図に走り出す。

 封筒が置いてある長テーブルに着く。

 足が遅いのでビリ確定。他の人はお題に従って奔走し続々とゴールしていた。

 余った最後の封筒を開けて紙を取り出した。


「…!」


 これは、運命のいたずら?

 もしかして、と梢ちゃんが脇にいたからじっと見ると、私の視線に気がついてニヤッと笑ってブイサインをした。

 やられた。


「えーっと…」


 とりあえず、やるしかないと思い動く。

 キョロキョロしていると見つけた。

 拒否されたらどうしよう…と不安になりつつ走り出す。

 ぼぉーっとしている彼の所に着いた。


「あの!」


 自分の大きな声に驚く。


「はい?」


 彼も驚いている。

 声が、言葉が出てこない。

 心臓が激しく鼓動していて、何も口から出てこない。

 だったら!

 彼の手を掴む。隣にいた彼の友達に一言。


七滝ななたき君、平幡ひらはた君を借ります!」


 有無を言わさず、お題を伝えず、勢いだけで引っ張りゴールした。


 ごろんとベッドに倒れ込む。

 自分の左手を見る。


「手を繋いじゃった」


 またドキドキしてきた。

 嫌だったかな?大丈夫かな?

 初めて男の子の手を握ったんだ。


「はぁ…」


 今日は眠れそうにないや。


 封筒の中にあったお題:最も気になる人

 自分の出した答え:平幡 はち

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