第12話 体育祭本番、自分的事件発生

 体育祭当日。

 100メートル競争が終わってから、玉入れをそこそこ頑張ってゆっくり観戦。

 暇の極み。 応援する気力なし。

 そんな俺の視界には、騎馬戦が行われていて白熱していた。

 七滝ななたきと体育得意な2人の3人組は、七滝を上にしてやってみたら無敵だった。

 無双状態。あいつ、ヤバい。

 力でねじ伏せているような…見た目は若干ヒョロッとしているのに意外だ。

 一瞬だけ俺の方を見た七滝はドヤ顔だった。

 集中しろよ、バカ。



『続いては、借り物競争です』


 借り物かぁ。

 小学校の時の借り物は、文房具だったり、家族や友達であれば一緒にゴールだったり、可愛らしいお題だった。

 中学ではふざけたお題があって、笑いが起こっていたな。

 この高校はどうなんだろうかね?


「借り物競争…青春ワードなお題あるのかね?」

「知らん。てか、りゅうは休憩タイムかよ」

「俺だって休みたい。リレーまで充電さ」

「ほお」


 皆楽しそうに借り物競争が繰り広げられている。

 平和だなーって、ぼへら~っと見ていると、ん?

 なんか…俺に近付いてくる人がいるような…。


「あの!」

「はい?」


 やってきたのは十田とだだった。

 どうした十田さん?

 すると、いきなり手を握られて、立たざるを得ない。


「七滝君、平幡ひらはた君を借ります!」


 俺は七滝の私物ではない、許可はいらんぞお嬢さん。


「ご自由に~」


 俺はお前のなんなんだ?!

 顔を真っ赤にしている十田。

 どういうことだ。

 拉致られたまま一緒にゴールとなった。

 三等でした、めでたしめでたし。



 俺と十田はゆっくりとクラスメイトのいる場所に向かって歩いていた。


「ありがとう」

「いえいえ、お役に立てたなら」


 目を合わせてくれない、えっ?俺、何かしたか?


「じゃあ…また!」


 十田はびゅーんと自分のクラスに走って戻って行った。

 取り残された俺は、ハッと我に返る。

 自分の右手をじっと見る。

 あっ…そうか…。

 十田の手を握った事に気付き、身体中に電気がはしる。

 人生最大の衝撃。


 どっどっどっ…どうすれば…。


 そして、この感情は…何なんだああああー!!!!!!


 この後、俺は体育祭に集中出来ず、どう行動していたのか覚えていない。

 ただ1つだけ覚えている。

 訳のわからないこの感情を力に変えて、綱引きに全部ぶつけたことのみ。

 そうしたらスッキリしたのであった。

 気が付くと、いつの間にか綱引きは優勝していた。

 因みにリレーは2位だったらしい。

 クラスの結果は、学年1位、全体3位で締め括った。

 こんな体育祭、初めてでした、お疲れ様自分。

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