第11話 体育祭、走るを中心に全てが回る

「体育祭について、出場種目を振り分けしまーす」


 体育祭実行委員の司会進行で始まった。

 高校に入って初めての体育祭。

 体育祭なんて、疲れるだけだ。

 小学校までは楽しいしかなかった。

 一等賞をとると褒められる。

 リレーでアンカーになって実際走って勝てば、クラスのヒーローになれる。

 本当に子供らしい単純な理由。

 ここで注意事項として、リレーで勝っている途中で転んで負けてしまうと、悪者にされてしまうから気をつけて参加をしなければならない。

 しばらく陰口言われかねないからだ。

 では中学に上がるとどうなるのか。

 状況は一変する。

 親がいる、恥ずかしい。

 真面目に走る、だるい。

 キビキビ動かないと、体育の先生に怒られる。

 地元の盆踊りなんて、在校生皆、気だるげに踊る。

 俺にとってマイナスばかり。

 この体育会系の時期、早く過ぎ去って欲しい。

 目立たない種目でサラッと頑張って、あとはひっそりと応援はしておくから。

 綱引きは力を入れているふりをして、省エネ対応が鉄則。

 と、願望が沸々と湧く。

 どんどん誰が何の種目に出るのかが決まっていく。

 残りは・・・なるほど。


「まだ出る種目決まっていない人ー?」


 俺を含めて3人が手を挙げた。

 うん、クラスで目立たない組ですね。


「じゃあ、玉入れ頑張って。あとは当日暇な人がカバーするってことで。良い?」


 意義なし。

 これで決まった。

 因みに全員で一致団結するのは綱引き。

 学年クラス関係なしのトーナメント制な為、余計に気合いが入る。

 ついていけない。困った。



七滝ななたきはリレー選抜かい」

「まあまあ」


 なんでも出来る男、それが七滝 りゅうである。

 羨ましいとは思わないが、ちょっと腹は立つ。


はち、省エネ対応はやめとけよ」


 バレたか。やれやれ。

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