第7話 仲良くなるまでは早かった

 あの日を境に、十田とだと喫茶店で会えばよく話すようになった。

 いつもの振り子時計に近いテーブル席で、他愛ない話を中心に、ちょっとだけ仲良くなった。

 友達と言っても差し支えないんじゃないか。

 相手は俺のことをどう思っているのか分からないが、少し不安だ。

 女子と仲良くなるなんて、今でも信じられない。

 初めてで、たまに、どう接していけば良いのか、迷ってしまうこともある。

 今のところ、彼女は嫌がってはいないから、このまま関係を築くのは有りだと判断する。

 あれよあれよと、1ヶ月が過ぎていくのだった。

 はしょりすぎ?いやいや、大丈夫だから安心したまえ諸君(何がだ!)。



 この日も喫茶店で十田と話していた。

 その会話にて、こんなことがあった。


「ねえ、そろそろ中間テストだね」

「あぁ」


 すっかり忘れていた。

 テストは億劫である。解ければ幸せ、解けずにいると疲れて諦める。

 諦めるは、寝る。以上である。


平幡ひらはた君、一緒にテスト勉強しない?…なんて」


 遠慮気味に言った十田。

 彼女の提案を聞いて、やる気のない俺に幸運がやってきたと思った。

 ここは、前向きに。


「良いアイデアだな。是非、ご一緒したい」

「良かった!」


 満面の笑顔。可愛いよ。


「お互いの友達も呼んで一緒にどう?楽しいと思うから!」

「分かった。じゃあ俺は秀才を連れてくるか」

「そんなお友達がいたの?」

「失礼だぞ」

「だって!」


 まあ、友達いないイメージを払拭したいものだ。

 因みに秀才とは七滝ななたきのことである。

 アイツは全ての教科での小テストがパーフェクトだったので、呼べば役に立つかと。


「そういう十田は?」

「うん、とても明るい友達なんだけど、その子を誘おうと思うの」


 十田は落ち着いているので、彼女の友人と会話したら煩く感じてしまうかな。

 盛り上げ役って大事か。


「場所は図書館?」

「無言はキツいかと」

「なら、どうしよう?」


 十田が考えていると「ここどうかしら?」と明るく声がかけられた。

 店員の尾沢おざわさんだ。


「良いんですか!?」


 キラキラした目で尾沢さんを見る十田。


「いいわよ!でも2時間だけね?」

「はい!ありがとうございます!」


 本当に良いのか?


「日曜の午後2時から4時は誰も来ないから、その時間帯なら大丈夫!」

「仕込み、とかで?」

「そんな所よ」


 こうして次の日曜に喫茶店・みずうみで勉強会となった。

 本当は2人で、なんて思ったけど、逆に集中出来ないかもな。

 ちょっと感傷的になるのであった。

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