第11話・二十三夜目の夜〈奇襲〉
試刀寺家の屋敷内を移動する伏間昼隠居。
その道中、彼は二人の女性と邂逅した。
「剣客さまぁ、こんにちはぁ」
「あぁ、どうも。君夜さん」
旭日君夜。
黒いセーラー服に、現代風にアレンジされたおかっぱな黒髪。
目元には魅惑の泣き黒子が刻まれている。
柔和な笑みを浮かべて彼女ともう一人は伏間昼隠居に近づいた。
「おうコラ、あたしに挨拶は無いのかこの野郎」
「こんちはっす。錆月さん」
対して、白い風貌なのが錆月季咲良だ。
背は低く、体系は平ら。幼女に見違う姿。
白一調のゴスロリ服を着込んでいる。
「いよいよ明日だなぁオイ、ふんどし締めて行けよ」
不良の様な口調で伏間の尻を叩く。
「俺はふんどしじゃないっすよ。ボクサーパンツです」
「色は?」
「重要ですかそこ?」
そんな会話をしながら三人は歩き。
分かれ道があった為に其処から三人は別れて歩き出す。
男性用の寝床と女性用の寝床が別たれている為だった。
そうして、伏間昼隠居が部屋に戻ろうとした時。
ふと、暗い廊下の奥から誰かがやってくるのが見えた。
それは青と白の雪を連想させる服装で、朝顔の様な色をした髪を束ねた女性だった。
その姿は見た事がある。
それは、離反した一刀谷義了に同行したとされる第六席。
隠涼花だった。
即座に伏間昼隠居は敵と判断して声を荒げる。
「第六せッ」
しかし、彼の声よりも、彼女の刃が腹部を貫いた方が先だった。
ぐさりと、深く彼の腹に突き刺さる刀。
刃から伝わる血がぽたぽたと落ちていく。
「はぁ……あぁ、熱い、とても熱い……でも、こうしたかった、ずっとずっと……」
妖艶な彼女は頬を赤くして興奮していた。
「ぐ、ふッ、何、言って―――」
「蒼白に死に化粧―――
隠涼花の〈炎命炉刃金〉の銘が口遊む。
それによって発生する、雪の様な米粒程の妖精が浮遊して。
「(氷の粒が、体をッ?!)」
伏間昼隠居に接触すると共に肉体が氷で覆われた。
呼吸器官を残して、口だけが空気に晒されている。
「さあ、物語を締め括りましょう……私の昼隠居」
うっとりとした表層で、隠涼花は伏間昼隠居の唇を貪った。
「はむ……ちゅ、ん……はっ、はぁ……」
愛する者と愛を確かめる様に。
この氷漬けになった時点で伏間昼隠居は気絶している。
だからこそ、舌を咬み切られる事無く、彼女の舌先が彼の口を犯していく。
「何してやがんだテメェー!」
地面を蹴って加速する錆月季咲良。
先程の伏間昼隠居の声は、彼女には届いていた。
掌から術具を出して戦闘に入ろうとする最中。
桜の様な髪をした若い少女が隠涼花と錆月季咲良の間に入ると。
掌から自らの術具を放出させる。
「嘘吐き舌抜き〈
突如とした斬人の能力に、錆月季咲良は不動を貫く。
「(〈閻姫〉の針生呱々、コイツも来てんのかよ面倒クセェなオイ!!)」
「(能力発動範囲に居る人間は行動する前に行動を口にしなければならない。何も言わず、また言った言葉と相違した行動を取れば、針が自らの肉体を自動的に貫いてくるッ)」
「何をしているのでしょうかぁ」
針が彼女の右腕、左足、脇腹に三点突き刺さる。
血が滲むが、さして痛みなど無い様子で、刀を振り下ろす。
きぃん。と。刀と氷が合わさった。
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