第6話・二十八夜目の朝〈絶体絶命に少女〉
俺が発現させた能力。
正式名称は「衝撃の術理」。
効果は至って単純、衝撃の強化と操作の二点。
相手の攻撃は物理であるのならばその衝撃を合わせる事で操作が可能となり、衝撃を地面に逃がす事が出来る。
逆に俺の攻撃は相手のどの部位にあろうとも衝撃を操作して内部破壊を起こせる。
背中を向ける蝙蝠の怪異に向けて俺は拳を叩きつける。
己の攻撃を上昇させる為に倍加させた衝撃を付加。
殴打して伝達させた衝撃は背中から発散させない。
内部を通らせて、蝙蝠の怪異の顔面付近まで移動させて炸裂させる。
そうする事で蝙蝠の怪異は顔面を強打された様な衝撃が広がって思った以上に仰け反った。
「しッ!」
フットワークを生かしてカウンター前に立つと、なるべくカウンターから蝙蝠の怪異を引き剥がす為に地面を蹴る。
衝撃強化と衝撃操作の両方を駆使する。靴底から発生する力に衝撃を加える事で、爆発的な速度を実現させる。
そして蝙蝠の怪異に向けてタックルを繰り出す。肉体に伝わる衝撃すら蝙蝠の怪異に与える為に、蝙蝠の怪異は吹き飛んで本屋から飛び出る。
「ぎゅびゅぁぎゃぁ!!」
蝙蝠の怪異が叫んだ。構わず進もうとして、俺の視界が揺らいだ。
「ぐぶッあッ」
それはただの悲鳴じゃない。それは音による振動。
脳が揺れて鼓膜が破れて血が噴き出る。音による衝撃波。
俺は地面に向けて拳を突いた。多少反応に遅れて攻撃を喰らってしまった。
自分自身が受ける衝撃を地面に流して、蝙蝠の攻撃を耐える。
「ぐ、はッ、はッ」
蝙蝠の怪異が引き起こす衝撃波が弱まり、完全に音の影響が消える。
なんとか……即死だけは免れた。
自分の十八番の能力で倒されるなんて笑い話にもならない。
けど、少し体が軋んでいる。音が骨を揺らして、腸さえも脅された。
「く、ふッ」
体が動かない。これは危険だ。
三半規管が異常を齎している。
立ち上がるのは困難だと判断する他無い。
「きぴゅあッ!」
蝙蝠の怪異が叫んで俺の元へ突進する。
今は動けない、このままだと蝙蝠の怪異に轢き殺されるッ。
「フクロウッ!」
蝙蝠の怪異の後ろから声が響いた。
どうやら、桐子さんが来ているらしいけど……だけど遅い。
刀を振って術理を開放する時には既に俺は蝙蝠に攻撃されてしまう。
自分の力で何とか動く他無いッ、そう思った直後だった。
急激に、視界が変わった。
本屋の中で蝙蝠の怪異による突進を受けそうになっていた俺は、何時の間にか外へ投げ出されていた。
「ぐ、痛ッ」
地面に転がる俺はへばりつきながら何が起こったのか理解出来なかった。
「ねえ、
そう少女の声が響く。
桐子さんじゃない、別の少女だ。
「今度は、間に合ったから」
少女は俺の顔を見てそう告げた。
その言葉はまるで、知人の様な口ぶりだったが、俺はこの女の事は全然知らなかった。
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