第5話・二十八夜目の朝〈食料探し〉
何故これ程までに桐子さんが過保護になってしまったのだろうか。
生存者や食料探し、そして怪異の討伐を目的に俺たちは市内を歩いている。
食料を探す場合は二手に分かれて行動し、其処で怪異に出会った場合は戦闘を行わず逃げるのが鉄則なのだが。
「フクロウ、そちらは何かありましたか?」
「あー……いえ、別に無いですね」
市内のコンビニに入って食料を探している。
だが、流石に電気の通わない場所にある食料の殆どは腐っていた。
異臭を放つコンビニだが、案外この臭いが苦手だから食料が漁られている可能性は低い。
まあ、この臭いを好んで来る野生の動物や怪異に出くわす事はあるが……。
「あ、見て下さいフクロウ。缶詰がありましたよ」
「そうすか、そりゃ良かった……」
……なんで食料を発見するたびに俺の元に来て見せつけて来るのだろうか。
何時もの桐子さんなら報告すらせずに黙々と食料を回収するだろうに。
「おかしいよなぁ……おかしい筈、無いよなぁ……」
俺はそうブツブツと言いながら食料を探す。
コンビニの在庫は漁られていたが、それでも携帯食料が隅に落ちてたりして、取り合えず二日分程の食料は確保出来た。
俺はリュックの中に食料を詰め込むと、桐子さんに声を掛ける。
「桐子さん、そろそろ移動しましょうか」
そう言って桐子さんの方を見るが、桐子さんは何か、別の方を向いていた。
何だろうか、俺は桐子さんが見ている方に顔を向ける。
………それは雑誌だった。食料じゃないから、誰も手を付けていない雑誌であり、その表紙はウエディングドレスだった。
「………あの、桐子さん?」
「……あ、はい。フクロウ。これ、持って行っても大丈夫ですよね?」
なんでそんな事、俺に聞くんだよ。
……と言うか、普通は
『この様な娯楽作品は……今は必要ないです。此処は戦場、娯楽に溺れると死亡の確率が高まる』
と言う筈だろうに。
本当にどうしちまったんだよ桐子さん……。
「ぎゃぁッ!!」
「ッ」
俺はコンビニの外に目を向けた。
先程のは悲鳴だ。
男性の、それも尋常じゃない、命に係わる様な悲鳴。
俺はリュックをその場に下ろして即座に走り出す。
「フクロウッ!」
声を荒げて、桐子さんも俺の後を追って来る。
コンビニから外に出て声のする方に向かうと、それは向かいの本屋から聞こえて来た。
がしゃん、がしゃん、と硝子を割る様な音が聞こえてくる。
俺は本屋に入って行くと、薄暗い部屋の中には、棚を蹴散らす怪異の姿があった。
蝙蝠の様な姿をした怪異は、カウンターに向けて牙を立てている。
「ひ、っひぃい!!」
どうやらカウンターの奥に、生存者が居る様子だった。
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