第32話


 邪龍神。1000年前にこの世界を滅ぼしかけた災厄の象徴たる龍。かつての勇者ですら討ち滅ぼすことができず、弱らせたところを龍巫女の命を賭した封印結界によって封印し、その封印の管理をするため、その上に龍族は住処を移したということがあったらしい。


「であと2ヶ月で封印が解けてしまうから、その処理を任せたいってことね。まぁ事情はなんとなくわかったけど、今は勇者がいないの?あと龍巫女も」


「当代の勇者はまだ未熟でとても邪龍神の相手になどなりませんな。龍巫女は育ってはいますが、龍巫女の封印も弱っていなければとても封印しきれない。今はヤツに対する攻撃力がとても足りていないのです。」


「あーなるほどね〜。前は勇者も龍巫女も育ってたからなんとかなったってことね。気になったのは、あなた達8龍王が束になっても勝てないの?」


「正直難しいですね。やつは暗黒龍が神を喰らい神の力を手にした個体故に闇の力が凄まじいのです。基本属性の攻撃は全て無効化されてしまい、身体能力や鱗の強度も我らより数段上のものになってしまっているため、8龍王でも有効な攻撃をできるのは時空龍の我と星龍位ですからね…」


「あーね。それは確かにきつそうだね。それにしても神を喰らって力を得たことはまだ亜神か。ならどうとでもなりそうかなぁ」


 と大体の事情を把握して一人納得しているエクレールに今度はマーリンが質問をした。


「亜神とはなにか聞いてもいいじゃろうか?」


「亜神ってのは神の領域に一歩踏み込んだ者ってところかな。神気は持ってるし生物としての格…みたいなのは神に近しいんだけど、その力を完全に自分のものにできてないってところだね。簡単に言えば神見習いってところかな。まぁ本人たちは全能感に満ち溢れてて見習いだなんて思ってないだろうけど」


「神見習い…話を聞く限り勇者でさえ倒せないような力を持ってしても見習い…祖龍神様がどれほどお強いのかもはや想像もできんのじゃ」


 まぁ実は今神気が封印されてて、実力の半分も出せないんだけどね。なんて口が裂けても言えないけど!それでも神界では神気を使わずに神と戦う練習もしてたし(神気を使うと戦いにならないから仕方無かっただけ)並大抵の神には負けないと自負してるし、ましてや亜神相手に負けるはずがない、……ないったらないのだ。


「アハハ〜…まぁね」


「頼もしい限りです。我々も待った甲斐があったというもの!では1ヶ月後に龍の里へとご案内するということでよろしかったですね」


「そうだね。じゃあ解散ってことで」


「わしも失礼させていただきます。報告しなければいけないことが多すぎて、老いぼれの頭では長く覚えておけませんからなぁ」


 マーリンはそう言って笑いながら礼をして、空間魔法で去っていった。あのじいさん空間魔法も使えたんだ。などと思いラウムツァイトの方を見ると話し終わったその場から動こうとしていない。


「帰らないの?」


 とラウムツァイトに声をかけると少し興奮気味に


「せっかく会えたのですまた別れてしまっては1ヶ月後にまた探すのに時間がかかってしまうかもしれませんそれにエクレール様はこの世界にやってきて間もないのでしょうということはこの世界の案内役が必要なのは明白そうこの我こそがエクレール様を御案内するのに相応しい人材と言って過言はないでしょうですのでこれから1ヶ月間お側に置いていただきたいのですがよろしいでしょうかエクレール様!!!!」


 とオタクもびっくりの早口で捲し立ててきた。ちょっと息も荒いしさっきまでとキャラ違くね…とたじろいでいるとふと視界の端にこんな表示が出ているような気がした。


 ラウムツァイトが仲間になりたそうな目でこちらを見ている。 仲間にしますか?

 →YES

 NO


 実際にはこんなものでていないのだがそれが見えてくるくらいに声掛け待ちなのだ。それに、性格にどこか難はありそうだが、この世界で長く生きていて空間魔法で世界を渡り歩いたであろうラウムツァイトなら確かにガイドにはぴったりか。ということで


「いいよ。ついてきな。でも私のこと龍神だって言うの禁止ね!わかった?」


「あぁ…!分かりましたエクレール様」


 ということで

 8龍王ラウムツァイトが仲間になった!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

龍神様の気楽な下剋上 鳴神光 @eclair13r

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ