第二話 一筋の閃き
次に向かったのはクローゼットだ。
大きな扉を開ける。
するとそこには…、立派な海軍の制服がかけられていた。
胸には数々の勲章が輝いている。
その傍らには帽子が。
(とりあえずこれを着るか…)
僕は青いパジャマを脱ぐと、その制服を着た。
(なかなかキマってるじゃないか!)
僕は心を躍らせ、自分がいる建物を探索するかのように階段を探し、1階へと降りた。
1階に出ると大きなロビーへと出た。
一言で表すと、豪華絢爛。
ロビーを中心に左右に長い廊下が伸びていた。
とりあえず右へと進む。
迷った時は右だな。
全ての部屋のドアがきちりと閉められている。
その中に一つだけ、軽く開いているドアがあった。
恐る恐る隙間から覗くと、先程の佐野という男が、何やら食器を出している。
美味しそうな匂いが漂う。
そう、朝食の時間だ。
足音で気付いたのか、佐野が自分に背を向けて話す。
「長官!やっと来ましたか…。今日の会議は今後の方針を最終決定する大事な会議です。しっかり食べて、頭を働かせましょう!」
机の上にはトースト2枚、目玉焼き2枚、ウインナー3本、サラダが豪華に盛り付けられている。
「佐野さん?でしたっけ、えっと、これを食べて良いんですか?」
「は?何を言っておられるのですか!長官が明日の朝飯はトーストが良い、って言ったじゃ無いですか!
それに、突然佐野さんなんて呼び方、気持ち悪いですよ?!
佐野!佐野!っていつものように呼び捨てにしてください!」
「は、はぁ…。」
どうもこの勢いは苦手だ。陰の者だった僕からすれば、陽の気配を感じる…。
とにかく時間が無い。飯を食おう。
ナイフとフォークを使い、目玉焼きを割る。濃厚な黄身が皿へと流れる。
「お?珍しいですな、長官がナイフとフォークを使われるなんて。いつも箸でガツガツいってるのに。」
なるほど、この世界の自分はそんな人なのか…。
「佐野さ…、じゃなくて、佐野。今日の会議の詳しい事を教えてくれないか?」
「昨日の夜説明したばっかりなのに…。寝たら忘れるんですね。
いいでしょう。説明しましょう。」
そう言うと佐野は懐から地図を取り出した。
こ、これは、僕の世界の世界地図そっくりだ…。
すると佐野はおもむろに鉛筆を取り出し、地図に書き込みを始めた。
「我々の住むニツポン帝国ですが、今、2つの選択肢を迫られています。」
ニツポン…?ニッポンじゃなくて…?まぁ良い、合わせよう。
「1つはザブル帝国との同盟を結ぶ道、もう1つはグリシア合衆国との同盟を結ぶ道です。」
あれは…地図的に見てロシアがザブル帝国だな。そしてアメリカがグラシア合衆国ね。
「それぞれの道の利点を説明致します。
ザブル帝国と同盟を結べば若干の輸出入の不利条約締結が不可避ですが、ザブルの影響力傘下に入り、我が国の安全保障が強固な物となります。
一方でグラシア合衆国と同盟を結べば、地位的な立場は同列、また、我が国が不足している石油の関税がかなり低くなります。」
「では、グラシアと同盟を結ぶのが良いんじゃないか?」
「いえ、いくら同列といえど、ここだけの話、石油ぐらいしか取り柄が無い国ですので国際的な地位は下のままです。」
なるほどな…。
そこで僕の脳裏に、一筋の光が差し込んだ。
「はっ?!」
「どうされましたか?!」
佐野が声を上げて心配してくれている。
「じゃあさ、2つとも要件を蹴って、いっそのことザブルに喧嘩を売ってみようよ。」
「はぁ?!」
何言ってるんだ、こいつは、という顔をしながら声を荒げた。
「お言葉ですけど、バカじゃ無いですか?!
国力では我が国の軍事力数値が最低でも4倍はあるのですぞ?!」
「軍事力数値?」
「もう一度学校に行きますか?世界平和条約で定められた、軍事力を数値で表す世界共通の数値ですぞ?」
平和条約なのに軍事力を数値で表すことを制定するなんてヤバいな…。
昔に何があったか知らないけど、今からの戦争は避けられない気がするぞ?
「なるほどね、けど勝てる気がする。作戦さえ練れば。んで、数値を教えてくれる?」
「わかりました…。我が国は1万6千、ザブルは10万と言われております。」
「なるほど…。後で軍の詳しい資料を見せてくれないか?艦隊数とか師団数とか…。」
「わ、分かりました…。」
なんとなくこの世界のことがわかってきた。
おそらくここで引き下がっては、日本の名が廃る可能性があるな…。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
朝食を食べ終わり、席を立つとポケットからなにやら付箋が…。
なんか書いてあるな…。なになに…?
《明日の会議では絶対に開戦を押し通す。これは、自分にしては珍しく意思表示の付箋となるだろう(笑)》
なんだよ、(笑)って。
さすが別世界の自分。
異世界の将軍に転生した戦争オタクの征服録 山神旬字 @YamagamiShunji
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