第9話 予定は未定
書き出した予定をなぞっては、僕は新しい高揚感に胸を躍らせた。
僕にとって必要なものは、きっとその先にあるものだと確信を持っていた。賢者は歴史に学ぶというし、僕の好きな作家の作品に擬えて、僕も旅に出ることにしよう。多分、自分探しなんてありきたりなことを言われるだろうが、僕は僕だし、探すまでもない。それでも、この好奇心にも似た高揚感は他の誰が得られるものだろうか。
見たことがないものを見る。知らなかったものを知る。決して書では知ることのできない雰囲気や手触り。僕に備わった隠された感性と出会うことで、僕はまた僕に近づくんだ。
そう思えた時、目の前で聞いたこともない言葉を話す教授の言葉が、急に色めきだし、僕の心を揺さぶっていた。今できることをしよう。まずはそれが最善だ。きっと僕がなくしてしまったものを新しいもので補填してくれると感じていた。立ち行かない僕を承認してくれるだろう。
ここをスタートラインとする。僕が始まった。
その日は少しだけ足早に帰宅の路を急いた。
目標を定めた僕は、加速度的に変化していく。
細胞が生まれ変わる。世界は色を変えることだろう。古いものは脱ぎ捨てていく。僕の形のパズルが欠けているピースが何かを教えてくれる。
ここに、こんな形のピースを嵌めていく。そこに、そんな形のピースを求めている。
ゆっくりと僕の形を整えていくつもりで、改めて僕の生活を見直してみた。大学の講義はなんというかチグハグに履修されていた。履修可能な上限は取得単位数で定められているのだが、取得可能な単位数には全然足りていないくらいの履修登録しかされていない。
そういえば履修の登録には第1回目の授業を受けてから決めようと思っていた。その猶予を大学から出されていたはずだった。興味が持てなかったら履修しなくてもいいかという気持ちでいたから、仮で設定していた講義は結局のところ履修されていない。だから時間割が歯抜けの状態になっている。
1限から始まる曜日があれば3限からの曜日もある。なぜ、こんな時間割を立てたのか僕には思い出せなかった。急いで入学式で配られた資料などを確認してみると、さまざまな規約や規則が記載されているだけで、この状況を変える方法は記されていなかった。
明日、学生課にいってみようと思い、浮き足出す身体をベットに沈め明日を待つのだった。
出掛けたい人が自転車で出掛ける話(仮) 細見歩く @aruku_hosomi
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