碧虚の空 第四話

「それの最後知ってる?」


彼が急に後ろから話しかけてきた。


「知ってるよ。この本持ってるもん。悲しい物語だけど。」


「そうか、なら話せるね。」


彼は私の隣に座り、私から本をとって話し始める。


「最後に、彼は死んでしまって、なつきは彼の代わりに彼の夢を叶える。世界を回って、色々な景色を見て、気づく。景色や、感動は人に伝えて初めて、綺麗なものになったり、美しいと感じることができるって。それを彼に伝えることのできなかったなつきは最後に言うんだ。『実際に見たって何も変わらない。私が見る世界は美しいとは思わない。あんたの言葉で初めて美しさを感じれる。』って。」


小説の最後で、彼の墓の前で、泣きながらこの言葉を言っているシーンが綺麗に描写されているから、とても印象に残ってる。


「空は世界が美しいって思う?」


何気ない質問だった。


「美しいかどうかは、この小説みたいに人次第かな。世界が美しいかどうかの判断は多分、一緒にいる人次第で、見えるものが変わると思うから。どんな感情も、共有できなければ意味はないからね。どんなものも人に伝えて初めて美しいってなると思うんだ。だから、今は美しいと思うよ。一緒の世界を共有できる人がいるから。」


そう言い残して彼は本を閉じて、席を離れた。彼の言ったことの意味はわからなかったが、話し相手ができて嬉しいってことでいいのかな?私は、彼の閉じた本を再び広げて羅列する文字に目を落とした。



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暦の空色 有馬悠人 @arimayuuta

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