碧虚の空 『百聞の価値を知らない人へ』
『百聞の価値を知らない人へ』
私は世界が美しいとは思わない。どんなロマンチックな夜景でも、自然の中で力強く生きる神木であっても。こういうことに興味がないのだ。どんな世界でも、別に変わりはしないし、そこまで興味はない。そんな中、会いたくない人に会った。
「なつきちゃん。おはよう。」
隣の家に住んでる、いわば幼馴染。馬鹿みたいに明るくて、私とは真逆の性格。夢は世界旅行らしい。
「おはよう。」
私がそっけない挨拶をすると、彼は必ず。
「げんきななつきちゃんが好きなのにな。」
恥ずかしがることなく、こんなことを言ってくる。最初の頃はドキッとしたのだが、毎日となると少々きついものがある。ため息をつく私の手を握って、彼は学校に足を進める。
「恋人でもないのに手を繋がない。勘違いされるでしょ?」
「なつきちゃんはいや?僕は勘違いされてもいいけど。」
いつもの、ふやけた顔ではなくキリッとキメに来た顔をする。私はその顔にドキッとすることなく、目を細めた。すると、そのキリッとした顔はすぐに解けていく。キメ顔をするとき大抵、彼はふざけている。
「だめかぁ。今回は決まったと思ったのに。」
「パターンが1つだから、分かりやすすぎるの。」
そんなこんなのやりとりをしていると、手を繋いでいたことなんて頭の中から消えていた。これが彼のずるいところ。気を逸らすのがうまい。
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