碧虚の空 第三話

ついてこいと言われついっていった部室は、図書室の中にある1室だった。彼は、私の手をはなし、カバンの中から可愛らしいぬいぐるみのキーフォルダーのついた鍵を出した。


「だいぶ可愛いのつけてるんだ。」


「これか?前の部長が使っていたのをそのままつけてるだけだけどな。」


彼は鍵を開けると、少し重そうな金属製の扉を開けた。扉を開けると、私が大好きな古本屋さんの匂いが熱風に乗ってくる。


「今、冷房つけるから少し我慢してくれ。」


彼はすぐに、冷房をつけた。そんなこと目にも止めずに、私は本棚に羅列されている本に目を輝かせた。


「適当に座っていいから。荷物も適当に・・・」


彼の言葉は私の耳には入らない。荷物を担いだまま、本棚に目線を集中させていると。


「おい。話くらい聞け。」


彼は、私の前に立ち、両手で私の頬を挟み、強引に自分に目を向けさせる。その時、伊達メガネが落ちた。すると徐々に彼の顔が私にもわかるくらい赤くなってきた。手を離し、本棚から適当に本を撮り、いかにも特等席のような席に腰を下ろした。


「この部屋、好きに使っていいから。基本的に俺以外の人間は来ないし、鍵を持っているのも俺だけだから。ほら、スペアキー。この部屋、俺がいない時も使いたいだろ?」


彼は、スペアキーを私に投げてきた。流石に、運動が嫌いな私でも、このくらいは取れる。両手で鍵を掴むと、


「やっぱり、伊達メガネなんだな。なんで伊達メガネなんてかけてんだ?」


メガネが落ちていることに気づいた私は、焦りながらメガネを拾ってかけた。


「関係ないでしょ。」


「いいだろ?気になったんだ。」


「人が苦手だから。メガネかけて本読んでると、誰も近づかないし、目つきが悪いの隠せるから。」


「なんだ。そんなんことか。かけるかけないは個人の自由だけど、俺はかけない方が好きかな。」


そう言い残し、彼は涼しくなってきた部室で、手にした本を読み出した。彼の残した言葉にまた私はモヤっとする。女性慣れしている感じが少し気に触るが、少しだけ嬉しかった。


本棚をひとまずは把握することにした。男子高校生だから、エロ本か、官能小説でも隠れて買っているかと思ったが、そんな本は見当たらない。哲学書や広いジャンルの小説がほとんどを占めていた。その中から気になる小説を手に取って、私は彼から少し離れた席に座り、彼同様、ほんの世界に入っていった。

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