碧虚の空 第二話
授業も受け終わり、長かった1日が終わった。転校ってこんなに疲れるものなのか。今まで味わったことのない疲労感が私にあった。
「ほら、行くぞ。」
隣の席で、小説を読み終わった彼は私にいう。
「行くってどこに?」
「入部してくれるんだろ?なら、入部届出しに行かないと。ささっと済ませて、俺は部室で本を読みたい。」
個人的には、今日はさっさと帰って、この疲れを取りたいところだが、部室にある本も気になる。私はほんの誘惑に負けて彼に連れられるがまま、入部届を書きに生徒会室に向かった。
「あっ、暦ちゃん待ってたよ。」
生徒会室ではすずちゃんが笑顔で迎えてくれた。奥にはおそらく先輩だろうという人もいる。少し自分の中で緊張感が走る。
「そんなに緊張しなくてもいいのに。会長、もしかして怖い顔してます?」
奥にいた人は生徒会長だったらしい。
「そんなことするわけないだろ。どうも初めまして、生徒会長の今井小太郎です。空が連れてきたって事は君も文学部に入るのかい?じゃあ、仲良くしてね。たまにしか行かないけど一応、僕も文学部だからさ。」
「小太郎さん、そんな事いいから早く済ませてくれない?」
「空はせっかちだな。いいじゃないか、話してもさ。さっき、すずから聞いたから少し気になっただけだから。じゃあ、暦ちゃんだっけ?ここに名前とクラス書いてくれるかな?」
私は言われた通りに出された書類に名前とクラスを書く。
「はい。これでおしまい。あとは空から色々聞いてね。不器用で無口なやつだけど、悪いやつではないからよろしくね。」
小太郎さんは私に向けてウインクをしてきた。私が反応に困っていると、
「また、そんな気持ち悪いことしないでください。暦ちゃんが困ってるじゃないですか。」
「あの・・・」
私が何か言おうとすると、彼が手を掴んで、
「じゃあ、終わったんでいきますね。」
と言って生徒会室から出て行った。
「よかったの?あれで?」
「あそこまでがひとくだりだから大丈夫。いつものことだよ。」
「小太郎さんとすずちゃんとはどういう関係なの?」
ずっと気になってた。人付き合いがいいとは決して言えない彼に対して2人ともすごく気さくに気を遣っている感じがしたから。
「小太郎さんとはいとこだよ。すずは小太郎さんの幼馴染。自然に話すようになっただけ。」
「そうなんだ。」
こう話している時も、彼は私の手を離していないことに気づく。私が手を振り解こうとすると、彼は強く握り返してきた。
「あの?いい加減、手離してもらえませんか?」
彼は無視してそのまま、進んでいく。
「聞いてるの?周りの目が気になるんだけど?」
「別にいいだろ?周りなんて関係ないし、場所わからないから案内してるだけだ。」
何度か振り解こうと力を入れるも、男子の力に勝てるわけなく、そのまま私が部室に連れて行かれた。
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