碧虚の空 第一話

2:碧虚の空


転校初日ということで、クラスの興味はほとんど私に向けられていた。積極的に話しかけてくれるすずさんはいいのだが、チラチラこちらだけ見てくる人はどうも好きにはなれない。監視されているみたいで気持ち悪かった。そんな転校生だ。1人になることなんか許されるはずもなく、今日中、わけもなく人が私の周りに集まって話しかけてくる。唯一の救いは、隣の席のすずさん。私が答えるのを嫌がっている様子を見せると、静止してくれたりした。とりあえず、すずさんの近くにいれば安心かな。


昼食ももちろん、私はすずさんと一緒に食べる。クラスのマドンナ的存在のすずさんの周りにはすでに、人だかりができていたが、すずさんは私の手を握って、「一緒に食べよ?」と誘ってきてくれた。「ついでに、空もどう?」2人は親しげで、少し関係が気になったが、彼は渋々、ついてきた。


中庭の一角。私たちは日陰の中に入って、すずさんは手作りのお弁当、私はおにぎり2つ、彼はコンビニで買ったであろう惣菜パンを食べている。


「暦ちゃんは、部活決めた?」


「決めてない。運動部は嫌だけど、多分文化系の部活に入ると思う。どんな部活あるのかも知らないし・・・」


「それならさ、空の部活ならいいんじゃない?お互い本好きみたいだし。何部だったっけ?」


「文学部。本だけじゃなくて、漫画とかも好きな人間が集まってるけど、基本的にほぼ幽霊部員。部費もあってないようなものだけど、年間10万円くらい図書室から出て、使って好きな本を買えるから。後々、図書室におけるように漫画はダメだけど。」


こんな条件のいい部活聞いたことない。今まで高くて手にできなかった本が、手には入らないが、この手に持って読むことができるかも知れない。


「基本的に、空しか使ってないから、ちょうどいいんじゃない?生徒会から文句言われたんでしょ?暦ちゃんが増えれば、文句言われることも少なくなるんじゃない?」


2人の視線は私に向けられる。急に向けられた視線に少しドキッとしたが、2人が求めている答えはおそらく一つだろう。


「わかった。文学部に入る。でも、半分は使わせて欲しいかな。」


「別にいいけど。もともと、ジャンルの好き嫌いはないから。」


「じゃあ決定だね。」


そのとき私はふと疑問に思った。


「すずさんは何部なの?」


「あ、私?生徒会だけど?」


「生徒会なの?もしかして、文句を言う生徒会の人って・・・」


彼はそっと、すずさんを指差す。すずさんはわかりやすく舌を出して左目を閉じ、頭に手を置く。てへっじゃない。うまいこと話に乗せられた気がしたが、私にとってもおいしい話だったので結果的に良かったのかな?



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