クールだと思っていた彼女は俺とのデレデレを所望する

御厨カイト

クールだと思っていた彼女は俺とのデレデレを所望する


突然だが、俺には彼女がいる。


が、とてもクールなのだ。


電話は1週間に1回ぐらい、デートというデートは付き合って1か月後にした遊園地デートぐらい。


あとは一緒に出掛けたり、映画を見たりもするがデートとかと言われると「・・・」と思ってしまう。



これを聞いた時、「え、なに、君たち冷めすぎじゃない。」と思う人もいるだろう。

でも、俺はこの関係が別に嫌ではない。

・・・別に俺はほっとかれるのが好きなドМというわけではない。



確かに電話とかは少ないがそもそもずっと好きだった女の子と付き合えている時点で俺は幸せなのだ。


まあ確かにイチャイチャとかはしたいとは俺も男だからそりゃ思う。

だけど、それが原因で別れたりするのが嫌だから、俺は我慢している。




別に彼女の方は俺が嫌いというわけではない。

一度、あまりにも心配になったから「俺の事嫌い?」と尋ねてみたが「そんなことは無い。ちゃんと好き。」と答えてくれた。

流石にそれが、俺に気を使っていた言葉ではないことは分かるから彼女はちゃんと俺のことが好きだということが分かり、俺は一安心した。



それからというもの俺はこの関係に満足している。

欲を言うのなら彼女の方にももっとアプローチをしてほしいのだが、これは仕方がない。



と思っていたのだが、ある日僕は彼女の本心について知ることになる。




********







コンコンコン




アパートの扉をノックする音が聞こえる。

俺を訪ねてくる人といえば、高確率で何かの勧誘、低確率で友人、超超低確率で彼女。

ソシャゲのガチャで言えば、ほとんど爆死する確率だ。

・・・なんか言ってて悲しくなってきた。



そう1人で悲しくなりながら、俺は扉の覗き穴で訪問者を確認する。


おいおいおい、SSRを引いたみたいだ。



訪ねてきたのは俺の彼女だった。

彼女が訪ねてくるのはホントに珍しいため、俺はウキウキしながら扉を開ける。



扉を開けた後、彼女は開口一番こう言ってきた。


「私って冷たい?」


「え?」


「だから、私って冷たいって聞いてるの!」


「いきなりどうしたの?」


「い、いやちょっとね。」


「ん?」


「・・・大学の友達が『彼氏が出来たから○○の話を聞いてこれからの参考にしたい』って言ってきたから私と君の話をしてあげたら『○○冷たくない?そのままじゃ彼氏に嫌われるんじゃない』って言われて。」


「なるほどね。」


「で、どうなの?」


「うーん、まあ確かに一般的に見たら冷たいのかもしれないな。」


「‼‼」


「でもね、俺はそれが冷たいとは思わないよ。好きな君と一緒にいられるんだ。それのどこが冷たいものか。それに僕が君を嫌いになるわけないじゃないか。俺は君が好きなのだから。」


僕の言葉を受けて、彼女は顔を真っ赤にする。

そして顔を俯かせる。


お、珍しい。

照れている。


この照れている顔を見れただけでも俺は満足だ。


少ししてから落ち着いたのか彼女は少し頬を染めながらも顔をあげる。



「君はこんな私でも好きだった言ってくれるんだね。」


「だって好きなんだもん。」


「・・・君は私のどういうところが好きなの?」


「え、上げ始めたら1時間以上かかるけどいいの?」


「・・・じゃあ大丈夫。」


「そっか。」


「ていうかどうして君はこんなに冷たい私を好きになってくれるの?」


「俺は別に冷たいとは思わないんだけどな。なんせ付き合ったのが君だけだから普通の基準がよく分からないからね。まあもし君が冷たいとしてもそれさえも補えるほど君には良いところがたくさんある。まあそれすらも上げようと思ったら1時間以上かかるけどね。」


・・・結構恥ずかしいこと言ってしまった。

多分鏡で確認していないけど俺の顔は赤いだろう。

まあでも本当の事だ。


「君は・・・・」


そう言うとまた彼女は俯いてしまう。


ヤバい、引かれたか。

そう思ったがピンク色に染まった頬を見るにそうではないことに気づく。


少ししてからまた彼女は顔をあげる。


「・・・ごめんね。」


「なんで謝るの?」


「いや、こんな性格の私だから君にはいろいろ我慢させちゃって。」


「ううん、大丈夫だよ。そういうクールなところも好きだから。」


「違うの、私は別にクールなわけじゃないの。」


「えっ?」


「本当はとても君のことが好きなの。好きで好きでたまらないの。」


「まじ?」


「うん。」


「だったらなんでああいうクールな反応をしていたの?」


「あれは・・・照れ隠しなんだよね。君が普段から好き好き言ってくれていたのとても嬉しかったの。でも私、うまくその喜びが表現出来なくていつもそっけない一言で終わってしまうんだよね。」


「そういうことだったのか。じゃあ一緒に買い物に行ったときとか、映画見に行ったときに一言もしゃべらなかったのは?」


「それもとても好きな君の隣でドキドキしていたからうまくしゃべれなかったの。」


「なんだ~そういうことだったのか~。あー良かった。」


「ご、ごめんね。君に余計な心配させちゃって。」


「ううん、全然大丈夫。逆にありがとう。言ってくれて。」


俺はそう言った後、彼女の頭をゆっくりとなでる。

彼女は「あうぅぅ」と顔を真っ赤に染めながら縮こまる。


かわいい。


俺は満足するまで彼女の頭を撫でた後、少し気になっていたことを尋ねる。


「てか何でそのことを言ってくれたんだ?」


彼女はまだ赤い顔で答える。


「えっと、さっき大学の友達に『○○冷たくない?そのままじゃ彼氏に嫌われるんじゃない』って言われたって言ったじゃん。それを聞いて今までの行動で君に嫌われているんじゃないのかと気が気じゃなくなって、ちゃんと君に説明して今までの誤解を解こうと思って。」


え、俺の彼女メッチャかわいい。

うわー、なんで今まで彼女の本当の性格について気づかなかったんだろう。

損してるわ、俺。


「もう好き、大好きだよ!」


俺はそう言ってギュッと彼女に抱き着く。

彼女は「え、えぇ!」と戸惑い驚きながらもキュッと抱き返してくれる。


本当に愛おしい。

この子の彼氏で本当に良かった。


数分後。

俺と彼女は顔を真っ赤にさせながらも向き合う。


「今まで君にはいろいろ我慢させてきちゃったから、埋め合わせをさせてください。」


「埋め合わせって言ってもな~。俺的にはこれから先も一緒にいてくれたらそれでいいんだけど。」


「そういうわけにはいかないよ!ほら、無いの?一緒にしたいこととか。」


クールだと思っていた仮面が外れたから、すごくがっついて来る。

こちらが元々の性格なのだろう。


「うーん。一緒にしたいことというか、もっと買い物をしたり、映画行ったり、おしゃべりしたり、まあ要するにもっとデートをしたいかな。」


「確かに私があまりしゃべらなかったから、今までのお出かけはデートと言えるかと言えば微妙なものだったもんね・・・。」


「まあ、そういうところも好きだけどね。」


「うぅぅぅ。も、もう、君って人は!」


「えへへへへへ。」


やばい、なんか街中で見かけるバカップルみたいになっている。

話を戻そう。


「そういう君は何かしてほしいことは無いの?せっかくもう素が出せるようになったんだ。何でも聞くよ。」


「え、私?私は・・・今まで君とちゃんと話せなかった分、もっと君とおしゃべりしたい。」


「そんなことでいいの?」


「うん!」


「じゃあ今からでもしゃべらないか?そういえば君の大学での姿とか知らないから。」


「うん、喋ろう、喋ろう!」


そう言うと彼女は俺の胡坐をかいている足の間にストンと座り込んでくる。

そして、こちらを振り向くと「へへへ」と照れ臭そうに笑う。


服越しに伝わる彼女の温もり。

俺は「幸せ」というものを改めて実感する。


それから俺は結構な時間話し込んだ。

窓の外を見てみるとすっかりと日が沈んでいた。


「すっかり暗くなっちゃったね。」


「そうだね。」


「まだまだ話したりないな。そうだ、明日も会わないか?」


「うん!会おう。」


「ついでにデートしよう。俺見たい映画があるんだ。」


「デート!やったー行こう行こう!」


「じゃあ明日迎えに行くから。」


「うん待ってる。じゃあそろそろ帰るね。」


「送っていくよ。」


「大丈夫だよ。家すぐそこだから。」


「そ、そう?」


「うん。」


「分かった。じゃあ明日。」


「うん、じゃあね。」


そう言うと彼女は玄関の扉をぱたんと閉める。

その閉める時も小さく手を振る。



俺はその閉まった扉を見て決心する。

そして俺は彼女の事のこと追う。



「やっぱり送っていくよ。」


彼女はびっくりした様子で

「え、ええ。大丈夫なのに。」


「いいからいいから、家に着くまでも喋っていたいし。」


「確かにそうだね。じゃあお願いしようかな。」


「まかせたまえ。」


俺たちは同時に顔を見合わせる。


「ぷっ、あははっ!」

「ふふふっ」


一瞬の間を置いて同時に吹き出すと、肩を震わせて笑い合った。


「行こうか。」


「うん。」






そうして、僕らは手をつなぎながら夜道を後にする。










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