最終話 平和と幸せと……

 しばらくサエイダの寝顔を見てると、アンラが俺の方を見る。


「ん? どうした?」


「あの……キスしても、良い?」


「――――どうしたんだ急に。いつもなら断りもなしにしてくるのに」


「べ、別に……。言いたかっただけ……」


 アンラは頬を赤くし、モジモジしながら視線を逸してそう言った。

俺は別に構わないので、俺はアンラを引き寄せて唇を重ねた。


「――――!? ……ん」


 最初は驚いた表情だったが、すぐに目を瞑った。

すると、今度はアンラから舌を絡ませ始めた。

唾液が絡まる音が、俺とアンラの間に鳴り響いた。

いつもよりかなり長めにした後、ゆっくりと顔を離した。


「はあ、はあ……。ルーカス……」


「アンラ……」


 物足りなかったのか、アンラはもう一度唇を重ねて舌を入れてくる。

俺たちはそれを何度も繰り返した。

今日のアンラはやけに積極的だ。

と、言うことは……。


「ぷはっ! はあ、はあ……。ルーカス、隣の部屋に行こう?」


「――――分かった」


 隣の部屋……それはかつてサエイダが生まれる前、つまり俺とアンラ2人きりで使っていた部屋だ。

今はあまり使っていないが、アンラがこの状態になった時はよく使っている。

 俺はアンラの脚を腕の上に乗せ、そのまま隣の部屋へ運ぶ。

いわゆる、お姫様抱っこというものだ。

これをするのも本当に久しぶりだった。


「――――ルーカスの顔が、こんなに近くにある……。かっこいい……。」


「へ?」


「お姫様抱っこしてくれるなんて久しぶりだから、何だかいつも以上にドキドキする……。はあ」


 アンラは俺の顔を見ながら、惚れ惚れとした表情でため息をつく。

これの首根っこに腕を回して見つめる彼女を見て、俺はさらに心臓の鼓動が早まる。

俺は早歩きになり部屋に入ると、アンラを優しくベットに下ろす。

 この部屋も窓があるため、青白い月明かりがアンラを照らす。

俺を見上げて、頬を赤くしながら物欲しそうに見る彼女は可愛くて、そして美しかった。

それを見ると俺はもう耐えられなかった。

すぐにベットに飛び込み、アンラに覆い被った。


「――――ルーカス」


「――――アンラ……。良いんだよな?」


「うん……。今日は2人で乱れたい気分なの。それはルーカスも同じでしょ?」


「ああ。愛してるアンラ。いつまでもずっと……」


「わたしも愛してるよ。ルーカスのお嫁さんになれて本当に良かった……!」


 そう言って微笑んだアンラを見た瞬間、俺たちは乱れた。

アンラの服を脱がし、俺も脱ぐ。

アンラの体はあの頃と変わらず、美しい体型だった。

 俺を求めてくるアンラを見るたびに、俺の心は暴走していった。

淫らに乱れ、疲れ切ってしまうまで何回戦にも及んだ。











◇◇◇











「はあ、はあ……。ふふっ、幸せ……」


 布団の中で一緒に寝ていると、アンラがそう言いながら俺を抱きしめてきた。

アンラの柔らかい肌が、俺の肌に全体に触れた。

俺はアンラの頭を優しく撫でて、唇を重ねた。


「――――ルーカス?」


「なんだ?」


「ルーカスは……今幸せ?」


 お互い顔を離すと、アンラはいきなりそんなことを聞いてきた。

俺は思いもよらない質問に、一瞬戸惑ってしまった。


「ど、どうしたんだ急にそんなこと聞いてきて……」


「何となくそう聞いてみたかっただけよ」


「何だそれ……。ああ、もちろん幸せだ。これも全部アンラのおかげだ。アンラと出会ったから今とても幸せだし、毎日が楽しいんだ」


「うん……。わたしもとっても幸せ。この国にいることも、そしてルーカスとこうやって傍に居られることも」


 アンラはそう言って、抱きしめる力を強くした。

俺も抱きしめてあげるが、1つ思い当たることが……。


「――――もしかして、しばらく俺が居ないのが寂しいのか?」


「――――!? ち、違うもん! 別にルーカスが一週間いなくなるから寂しくて仕方ないとか、そんなのじゃないからね!?」


「やっぱりそうじゃないか……」


「――――っ!」


 バレバレだ。

何とか否定しようとしてはいたが、焦ってアワアワしている時点で、アンラは本当は俺がしばらくいないから寂しくて仕方ないというがすぐに分かる。

よっぽど恥ずかしかったのか、アンラは俺の胸に顔を埋めた。

そんな彼女を見て、俺は笑った。


「大丈夫だアンラ、もちろん俺だって寂しい。しばらく俺の大切な人と会えないないのはやっぱり寂しい」


「――――本当に?」


「ああ。前回の時だって帰って来た途端、俺泣きそうな顔していたの覚えているだろ? それぐらい寂しいんだ……」


「――――! ふふっ……! 確かにそうだったわね。ルーカスって意外に涙脆いもんね」


「――――」


「そう言われたら黙っちゃうルーカスは可愛いね!」


 意地悪っぽく笑った顔で、アンラは俺の頭を撫でた。

未だにアンラに撫でられるのはあまり慣れていない。

男のプライドというものが勝手に出てきてしまうせいか、恥ずかしくなり、アンラから視線を逸した。


「ふふっ……そんなに恥ずかしがっちゃって。普段はかっこいいけど、たまに可愛い一面を見せてくれるところも好き」


「――――べ、別に恥ずかしがってるわけじゃないし……」


 完全にアンラが立場が逆転してしまった。

先程までは俺がリードしていたのに……。

毎回毎回こうなんだよな。

最初は俺が主導権を握っていたはずなのに、気づいたらアンラに主導権を握られてしまうという状況になってしまう。

 しばらくは俺の頭を撫でていたアンラだが、今度は俺の手を握って俺の顔を見た。

アンラの大きくて綺麗な紅い瞳と小さな顔が映る。


「ルーカス」


「な、何だ?」


「わたしね、ルーカスに出会えて良かった。ルーカスと出会ってから、わたしの生活はガラリと変わった。一人っ子だし、次期魔王の候補ということもあってずっと一人ぼっちだったからあまり楽しめなくて……。でも、この国は大好きだった。そんな時にルーカスがやってきて……。ルーカスがこのお城に住むことになってから、毎日がとても楽しかった。それに……ずっと好きだった人とこうやって傍に居られる今はもっと幸せなの。だから……ルーカス大好き、わたしも愛してる!」


「アンラ……」


 アンラは頬をほんのりと赤くし、左の薬指に嵌めている指輪を見ながら、ニッコリと笑ってそう言ってくれた。

そして、またお互いに長い時間唇を重ねた。

お互い顔を離すと、俺はアンラの手を握った。


「アンラ、これからも一緒に頑張ろうな。この国の平和と幸せ、そして俺たちとサエイダの幸せがいつまでも続くように……」


「ルーカス……。うん! みんながいつまでも平和で幸せに暮らしていけるように、お互い頑張っていこうね!」

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魔王に見初められる うまチャン @issu18

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