6月12日 午後

「今日は休日。デートをしよう。」

「よし、ドリブルだな。」

「ドリブルって何だよ…」

「バカ野郎。女子力=ドリブルやろうが!お前には女子力が足りん。アジア初のパロンドーラー澤穂希こそ至高の女。あのコピペを見たことはあるだろ!」

「知らない。」

「ナデシコJAPANのことブサイクとか言ってるけど、鮫島とか川澄とか普通に可愛いし、大野だって小動物系で愛くるしいルックスしてる。ていうか、近賀ですら実際に見たら愛嬌があって可愛いよ。 丸山なんか人妻の色気ムンムンだし、澤もドリブルが上手い。」

「だから、何だよ。」

「バカ野郎。ナデシコジャパンで一番モテていたのは澤だぞ。現在は結婚して一児の母だ。つまり、ドリブルこそ女子の魅力。行き遅れても知らんぞ。」

「そこは、お前が責任持つ所じゃないんかい!」

「そこまで言われたら仕方ない。映画にしようか。」

「何がやってんのかな。」

「ふふふっ。女子の心を完璧に把握している我輩にスキはない。」

「女子力をドリブルと勘違いしている奴がよく言うよ。」

「聞いて驚け。昨日から『さよなら、私のクラマー』が公開してるんや!観に行こうぜ!」

「結局、サッカーやないかい!」

「じゃあ、何が観たいんだよ。」

「お前は全人類がサッカー好きだと思い込んでいるバカ野郎だからな。女の子の気持ちがわからないのも無理はない。」

「はぁ!?FIFAの加盟国は国連より多いんだぞ!世界で最も愛されているのはサッカーだ。それでも違うというのなら、教えてもらおうか。」

「聞いて学べ。全女子が望んでいる映画こそ『アフリカン・カンフー・ナチス』や。」

「なんで!?アフカンは女子要素皆無やないか!」

「よく考えてみい。女子が何を見て育ったと思う。プリキュアや。つまり、格闘戦が嫌いな女子はおらへん。」

「それ、お前の趣味なだけやろ。」

「はぁ!?わたしは一般的な女子だが。」

「酔拳からザ・フォーリナーまで揃えているカンフーオタクがそれを口にするか。」

「ジャッキーを侮辱する気か?受けて立つぞ。」

「いや、ジャッキーは俺も好きだよ。だけど、カンフーが好きじゃない女子は普通にいるでしょ。」

「これだから、女心がわからない奴は駄目なんだよ。」

「まて、俺が間違ってんのか。」

「そもそも、冷蔵庫にアドンコを常備しているくせに、アフカンを観に行かないつもりか?」

「…くっ…それと…何…が……関係が…ある。」

「あぁ、それから一つ言っておく。私が本気出せばお前は殺せる。それを念頭に置いて答えを選べ。」

「アフリカン・カンフー・ナチスをありがたく見させていただきます。」

「それで良い。周りが女子ばかりでもはしゃぐなよ。」

「それはない。」

「そうかそうか、うい奴め。まあ、流石にわたしよりかわいい女子はそうそういないからな。」

「鏡を見てみることをオススメするよ。」

「今さらわたしの美貌にわたしが惚れることはないわ。」

「…まあいいわ。それじゃあ行きますか。」

「今日も暑そうやわ。」

「保冷水筒に麦茶入れていくからちょっと待って。」

「はよせえよ。」

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夏と私とアドンコビター あきかん @Gomibako

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