第12話 個か群か

 お姉ちゃん一人の行動を制限すれば、お姉ちゃんは死なない。

 

 その考えは、正直言って、どうかしていると思う。


 だってお姉ちゃん一人さえ助かれば、他の人は二の次といった考えになるからだ。


 それでも、大勢を救おうとして結局誰も救えないのなら、せめてお姉ちゃん一人でも救いたい。


 その考えは悪い考えなんだろうか。


 悪かったとして、誰が私を責められるのか。


「お姉ちゃん……どこ行くの?」


 玄関口で靴を履くお姉ちゃんに尋ねる。


「買い物よ。なんか世の中が大変なことになってるし、あんたは家にいなさいね」


「買い物なら私が行く」


 


 そのあと、私とお姉ちゃんは言い争いになった。


 どれだけお姉ちゃんが言っても私が譲らず、最後は泣き喚いたからだ。


 買い物に行けないだけで泣き喚く4年生(中身は6年生だけど)。


 そして感染症に対する温度差。


 お姉ちゃんは引いていたと思う。


 それでも私は、お姉ちゃんが死ぬ可能性が1%でもあるのが嫌だった。


 結局、買い物には仲裁に入ったお母さんと私が行くことになった。


 これはこれで……意味がなかったこととは思わない。


 でも、こんな手がいつまでも続けられるの?

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