第10話 どうして教えてくれなかったの

 2月。突然の一斉休校に、私以外の日本中が面食らった。


 先生ですら。いや、校長先生ですらあの件は総理の会見で知ったとのことだった。

 

 日本中が恐怖に包まれたのを、肌で感じた。


 過去を振り返ってみても、この時は恐怖のピークだったように思う。


 ともあれ、普通の生活を送っていた未来人の私も、休校によって時間ができた。


 脳みそにスペースができたことで、アイディアも生まれてくる。


 インターネット上で預言者になるのはどうだろう。


 匿名で発信すればバレない。


 最初は誰も人してくれなくても、未来を当て続ければ少しずつ信じる人が増えるはず。


 そうしたら、お姉ちゃんが感染した“第三波”と、その前の“第二波”は抑えられるかもしれない。


 パソコンの前に座った。そしてキーを叩こうと構える。


 でも、ほんとにインターネットってバレないの?


 大勢の人が探っても?


 警察が探っても?


 仮にアメリカや中国が本気で探っても?


 小学生の私が逃げ切れる?


 全身が寒くなって、私はブラウザを閉じた。


 今日も、私は恐怖に負けて、何もできなかった。


 世界中でこれから苦しむ人。亡くなってしまう人からすれば、どうして教えてくれなかったの、ってなると思う。


 休校中に何をしましたか? そう聞かれたら。


 私は何もしていませんでした。何もできませんでした。


 そうなってしまうと思う。


 お姉ちゃんを。たくさんの人を救うチャンスを、私は持っているはずなのに。


 涙が出そうになった。

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